我々は、眼球運動に伴う高速な網膜像の動きには気づかない一方で、高速で動く物体の運動は正しく知覚できる。本研究では、脳がどのように視覚世界の安定性と対象の運動検出を両立させているかを明らかにすることを目的とする。そのために、速いスピードにおける反適方向に対する細胞反応が強くなることによって眼球運動による網膜像の動き信号を消去し、知覚を抑制するという新仮説を提唱し、これを検証する。
平成27年度では、まず基本となるデータを集めるために、サルMT野およびMST野における記録実験を進めた。注視課題をおこなっているサルのMT野およびMST野から単一ニューロン活動を記録し、運動方向とスピードに対する反応特性を調べた。その結果、両方の領野において、最適運動方向と反対方向に刺激が運動するときには、速いスピードに対する反応が遅いスピードに対する反応よりも強くなっている細胞が見られた。
また、平成28年度以降で、サルが眼球運動をしているときのニューロン活動を調べる予定のため、サルにサッカード課題を訓練した。
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