研究課題/領域番号 |
15K16017
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
西田 知史 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター・脳情報通信融合研究室, 研究員 (90751933)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 視知覚 / 意味 / カテゴリ / 脳内表現 / 自然言語処理 / 符号化モデル / 復号化モデル / MRI |
研究実績の概要 |
短期記憶におけるヒト大脳皮質の物体カテゴリ表現を検証するにあたり、自然知覚刺激に対する皮質の応答に基いて脳内カテゴリ表現を可視化する手法の改善を行い、精度の向上とともに汎用性を高めることに成功した。従来のカテゴリ表現の可視化手法では、知覚刺激に対して単語でラベル付けすることにより、可視化モデルの構築を行っていた。それに対して、我々の提案した新手法では、知覚刺激に対して自然記述を行った文章において、自然言語処理技術を適用することで、可視化モデルの構築を行った。これにより、可視化の精度を高めるだけでなく、物体だけでなく動作や印象といったカテゴリ情報の脳内表現まで可視化することが可能となった。我々の新手法を短期記憶の脳内カテゴリ表現の検証に利用することで、従来研究の多くが調べていた物体情報の短期記憶だけでなく、動作や印象といった、より抽象的で主観的な情報の短期記憶まで検証することができ、短期記憶およびその脳内表現に関わる神経基盤の理解において、重要な貢献を行うと考えられる。 また、上述の新手法により構築した可視化モデルは、自然知覚条件下における個人の脳活動から知覚・認知情報を復号化することにも利用できる。実際に、脳活動から言語(単語等)として知覚された物体・動作・印象の情報を復号化する技術を確立し、テレビ広告等の動画コンテンツの定量的評価への応用に成功した。この技術は、知覚条件だけでなく短期記憶条件においても利用可能だと予測される。短期記憶における情報の復号化は、外界では消失したが脳内で保持される情報の可視化を表しており、ブレインマシーンインターフェース等への工学的応用が期待される。すなわち、本研究計画で得られる成果の社会的応用価値を高めると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに実施したMRI実験により、新たに30名以上の実験参加者における動画視聴時の脳活動を計測することができた。さらに、それらの脳活動を用いて、新規提案手法を用いたカテゴリ表現可視化モデルの構築に成功した。したがって、知覚条件下における可視化データは十分な数が集まったといえる。これらのデータを今後、短期記憶条件下におけるモデル構築に利用し、さらに条件間でのカテゴリ表現の比較に利用することを考慮すると、本研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
短期記憶課題を遂行中の脳活動をMRI実験により計測し、短期記憶条件下における脳内カテゴリ表現の可視化を進める。そして、知覚条件下における脳内カテゴリ表現との比較検証を行う。 並行して、脳内カテゴリ表現可視化のためのモデルの改善も行う。精度の高い可視化モデルは、表現の精緻な分析に必須であるため、既存の脳活動データを利用して、モデル改善について取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、当年度に実施する予定であったMRI実験が、次年度に持ち越しとなったため、それに必要な費用の分を繰り越して利用することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
主に実験に必要な費用(設備、消耗品、謝金等)に利用する予定である。
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