研究課題/領域番号 |
15K16025
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
武村 紀子 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教(常勤) (60733110)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 快不快推定 / 照度変動 / 無意識的行動 / 疲労推定 |
研究実績の概要 |
近年,生理指標や表情,行動,音声などの情報を用いた快不快推定が盛んに行われている.快不快はヒトの高次の認知機能によって生み出されているため,多種多様なセンサを用いてヒトの状態を計測したとしても快不快推定に十分な情報が得られるとは言い難い.本研究では,快不快の対象となる環境自体にヒトが知覚できない程度の微小な時間的・空間的変化を与えることで,ヒトの無意識の行動や状態の変化を誘発し,快不快推定に有用な情報を得ることを目指した. H28年度はデスクワーク時の照明環境に対する快不快状態を環境埋込み型のアンビエントセンサを用いて推定した.まず,被験者実験を行い,照明環境を微小変動させることで誘発されるヒトの無意識的行動の計測を行った.実験では,机上面の照度を8パターンに変動させ,そのときの眼球運動,着座姿勢の変化,ペン先の動きをそれぞれ筋電計,座圧計,赤外線カメラを用いて計測した.センサデータから抽出した様々な特徴量に対し,SVMを用いて快不快推定を行った.評価実験の結果,照度を微小変動させることで,照度が一体の場合よりも推定精度が大幅に向上した.また,適切に照度を変動させることで,学習データに推定するヒトのデータが含まれていない場合についても高精度で推定が可能であった. さらに,一般的で汎用性の高いカメラのみを用いて,ヒトの顔画像における強度の時空間変化特徴に基づいた精神疲労状態の推定を行った.顔画像中の強度の時間変化を表す特徴として,頬の領域における強度の時間変化の周波数スペクトルを,空間的変化を表す特徴量としては目と口の領域のHOG特徴量を抽出した.それらの特徴量をLTEを用いて統合し,SVMを用いた疲労の認識を行った結果,F-measureで92%を示し,顔期間特徴点の位置に基づく疲労情報や顔画像から抽出した心拍変動を用いた従来手法に比べ,10%以上の精度向上を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ユーザの無意識的行動を能動的にセンシングすることで,照明環境に対する快不快状態の推定を高精度で行うことが可能となった.この成果を国内会議で発表し,さらに学術論文誌への掲載が決定している. また,顔画像における強度の時空間変化特徴に基づいた精神疲労状態の推定を行い,従来手法よりも高い精度で推定可能であることを示した.この成果を国際会議で発表し,さらに学術論文誌へ投稿中である.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の内容は概ね完了しており,今後は,学術論文誌に投稿した査読結果に応じて,原稿の修正および追加実験等を行う予定である.論文誌の掲載費および追加実験の費用をH29年度に支払う必要があるため,研究実施期間を1年間延長した.
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次年度使用額が生じた理由 |
謝金なしで被験者実験に協力してもらえたため,謝金が節約できた. 採録が決定している論文誌の掲載費の請求が28年度に行われなかったため,その分の予算が余った.
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次年度使用額の使用計画 |
採録が決定している論文誌の掲載費に充てる予定である. また,現在論文誌に投稿中の論文の掲載費にも使用する予定である.さらに,投稿中の論文の査読結果に応じて,追加実験等を行う必要が生じた場合には,その費用に充てる.
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