研究代表者が参画していたCRESTプロジェクト「歩容意図行動モデルに基づいた人物行動解析と心を写す情報環境の構築」(研究代表者:八木康史)の一環で開始した,複数の高齢者施設でのデュアルタスク(足踏みと計算問題を同時に行うタスク)体験データ収集によって得られたデータセットを用いて,認知機能計測手法の提案および体験に対する慣れに関する分析を行った.認知機能計測手法は,Kinectで得られた足踏み中の三次元姿勢データから各関節の運動をスペクトル解析したもの,および,計算の回答の時間間隔や正答率などを列挙した特徴ベクトルをSVMで識別するものであり,認知機能の低下が疑われる目安となるMMSEスコア25未満の高齢者を従来より高い精度で識別できることを確認した.また,同一の高齢者が多数回体験したデータがあることから,体験回数に応じた識別性能の変化を調査し,体験に対する慣れの存在や,安定した識別を行うための目安となる体験回数を実験的に調査した. 一方,上述のCRESTプロジェクトで実施した日本科学未来館での1年間の展示によって得られた小中学生のデュアルタスクデータについても分析し,デュアルタスクの遂行の様子から年齢の推定が可能であることを示した. 眼球計測を行わない注視方向推定についても引き続き研究を行った.前年度まで眼球と頭部の協調運動をモデル化するために用いていた注視行動データセットが,その人数やシーンバリエーションの面で不十分であったことから,視線追跡型VRゴーグルを用いてさまざまな仮想シーン下での眼球・頭部運動を効率的に収集できるシステムを構築した.また,そのシステムを用いて実験参加者16名,シーン数3の新たなデータセットを構築し,それを用いたモデル化による注視推定精度を評価した.
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