研究課題/領域番号 |
15K16027
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
久保 尋之 奈良先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (90613951)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 表面下散乱 / 曲率に依存する反射関数 / インバースレンダリング / 画像解析 / コンピュータビジョン / コンピュータグラフィクス |
研究実績の概要 |
本研究課題は,半透明物体の散乱パラメータや幾何情報を画像から取得するために,コンピュータビジョンによる画像解析に適した表面下散乱現象の新たな数理モデルの開発が目的である. 平成28年度は,形状が既知の任意の幾何形状の半透明物体に対してシミュレーションにより画像解析を試みた.さらに,形状が未知の場合についても挑戦を開始しており,画像から物体の法線方向を推定する手法として照度差ステレオ法が知られているが,被写体は不透明であることが前提であり,半透明物体に対して適用すると法線が空間方向に平滑化されたように誤った出力が得られる.そこで,従来の照度差ステレオ法により出力された法線を初期推定値として初期法線マップを生成する.次に初期法線マップをカメラ空間で微分して得られた曲率を使って,前年度の成果である表面下散乱のモデル式から散乱パラメータを推定する.さらに,前述のモデル式から新たな法線マップを推定することで,法線マップと散乱パラメータとを交互最適化により推定することが可能である.これにより,物体の散乱パラメータと法線情報がより精度良く求まることが確かめられた.本手法の交互最適化は,物体の形状や表面下散乱の程度にも依存するが,たかだか10回程度で収束することが実験的に確かめられ,現在はCPUによる実装であるが,GPUによるピクセルワイズの並列化を実装すれば,極めて短時間での処理が可能であることを示唆している.以上の成果をまとめたものが,査読付き国際会議NICOGRAPH Internationalおよび,画像ラボ(総論)に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,形状が既知の任意の幾何形状の半透明物体を扱うことを予定しており,これまでに達成した球体だけでなく,コンピュータビジョンやコンピュータグラフィクス分野でベンチマーク的に使用されるStanford Bunnyの形状や,データセットが広く公開されている牛型の形状での解析を行った.このとき,素材の形状や特性によっては,これまでに開発した物体の曲率に基づく解析法だけでは誤差が大きくなることも確認されているため,数理モデルをより発展させることが必要であると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降は,推定精度やロバスト性を考慮することが必要になると考えられ,数理モデルをより一層発展させることが必要である.CG分野で最近発表された,表面下散乱現象の新たな数理モデルであるDirectional Dipoleモデルの導入がその一案であり,すでに初期検討に取りかかっている.これを用いて,これまでの数理モデルとハイブリッドで使用していくことなどを予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
光学機器の構成の一部を変更したため,差額分を次年度に繰り越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
差額は比較的少額であるため,次年度の予算執行計画に大きな変更の必要は無い.
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