研究課題/領域番号 |
15K16037
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
山本 景子 京都工芸繊維大学, その他部局等, 助教 (10585756)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | デザイン支援 / 重畳提示 / 入力インタフェース |
研究実績の概要 |
無から有を生み出す創造的な活動において,そのプロセスを円滑に行うための支援は重要である.絵画における紙と絵筆のように,頭の中に浮かんだアイディアをすぐにアウトプットし評価できる環境がプロダクトデザインにおいても必要とされている.これまでのコンピュータ支援は,入出力デバイスの制約により,感性評価が十分に行えない,アイディアのディテール度の変化に追従できない,入力インタフェースのために習熟が必要であるという問題がある,そこで本研究では,3Dプリンタにより出力された実物体にコンピュータにより生成されたディジタルデータを重畳する出力システムと,ユーザの把持動作を検知し,能動的にモードを切り替える入力デバイスを組み合わせることにより,これらの問題を解決するデザイン支援環境の構築を目標とする. 申請者は過去に,形状既知の固定白色実物体にプロジェクタにより陰影情報を重畳することにより,仮想的に形状が変化して知覚されるディスプレイシステムを構築している.本研究においては,3Dプリンタで出力した白色実物体に対し,上述のディスプレイシステムの原理と同様に陰影情報を重畳することにより,デザイナが実物体を手にしながらデザイン作業を施せるようにすることを目指す.本年度は白色実物体に対し,プロジェクタにより陰影情報を重畳するシステムを構築し,精度評価を行った.その結果,ユーザが白色実物体を手にしてデザイン作業を行う上で問題となるレベルに時間遅れや位置ずれが発生してしまうことがわかり,提示手法に改善が必要なことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究においては,3Dプリンタで出力した白色実物体に対し陰影情報が重畳される出力システム,デザイナの入力デバイスの把持動作をトリガにモードを自動で切り替える入力インタフェースを組み合わせることで,デザイナが自身のアウトプットを確認しながらイメージを形にしていくための支援システムの実現を目指す. このうち今年度は,申請者が過去に構築したディスプレイシステムを応用し,ユーザが手にした白色実物体に対し,プロジェクタにより陰影情報を重畳するシステムを構築し,精度評価を行った.白色実物体が静止している状態のときには時間遅れや位置ずれは観測されなかったが,白色実物体が移動・回転をする場合に,ユーザが白色実物体を手にしてデザイン作業を行う上で問題となるレベルに時間遅れや位置ずれが発生してしまうことがわかり,提示手法に改善が必要なことが明らかとなった.これは当初想定していた以上のレベルの遅れやずれであり,改善手法のための基礎的な調査をやり直し,実装,調査を繰り返し実施しているところである.また当初,入力インタフェースの設計・実装・評価を,出力システムの実装・評価と同時並行で実施する予定であったが,研究協力者が不足してしまったため,これについては,上述の要求レベルがある程度実現可能であることがわかってから実施する予定にしている.
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今後の研究の推進方策 |
当初から,今年度で出力システムと入力システムのプロトタイプを設計・実装・評価し,平成28年度はそれを踏まえて再実装することを予定していたため,出力システムに関しては予定通り,ユーザが白色実物体を手にしながらデザイン作業を行う上で問題ないレベルにまで時間遅れ・位置ずれをなくすことを目指す. また,入力システムに関しては,申請者が過去に実装した,握り方や握り位置をセンシングするペン型デバイスを応用し,握り方,握り位置,握り圧のセンシング,ペンの位置姿勢をトラッキングを可能とするペン型入力デバイスの設計・実装・基礎的な評価を行う.同時に,各システムの実装・評価における知見を対外的に発表・ディスカッションすることにより,さらなる改善点や発展を様々な観点から見直す. 平成29年度は,上述2種のサブシステムを統合したシステムに,3Dプリンタを含めた環境を構築する.これにより,頭の中に浮かんだ最初のシンプルな形状を3Dプリンタで制作するところからはじめ,実装したペン型デバイスにより変形操作し,その結果を制御用コンピュータに取り込み再度3Dプリンタ出力するというサイクルを実現する.この環境を用いてプロダクトデザインを専門とするデザイナを被験者に,デザイン作業を対象とした評価実験を実施する.さらに,複数ユーザや遠隔地間作業への対応も検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は同内容のテーマで別の単年度予算があったため,それを優先的に使用したことと,システムの実装・評価に問題があったため,その改善のための基礎的な調査を重視したため,新規購入物品や対外発表のための旅費,被験者のための謝金等の使用が発生しなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
出力システムの再実装および評価,入力システムの実装および評価のために,新規購入物品と被験者実験における謝金に使用する.特に,本システムの対象であるデザイナは特殊技能を有する被験者であるため,謝金が比較的高額であることが予定されている.また,成果発表およびディスカッションのために国内・国際学会への参加費用に充てる.
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