無から有を生み出す創造的な活動において,そのプロセスを円滑に行うための支援は重要である.絵画における紙と絵筆のように,頭の中に浮かんだアイディアをすぐにアウトプットし評価できる環境がプロダクトデザインにおいても必要とされている.これまでのコンピュータ支援は,入出力デバイスの制約により,感性評価が十分に行えない,アイディアのディテール度の変化に追従できない,入力インタフェースによる習熟が必要であるという問題がある.そこで本研究では,3Dプリンタにより出力された実物体にコンピュータにより生成されたディジタルデータを重畳する出力システムと,ユーザの把持動作を検知し能動的にモードを切り替える入力デバイスを組み合わせることにより,これらの問題を解決するデザイン支援環境の構築を目標としている. 申請者は昨年度までに,形状既知の白色物体に陰影情報をプロジェクションすることにより,仮想的に形状変形が知覚されるディスプレイシステムを構築し,精度評価実験を実施してきた.しかし,実際にデザイナに使用させうるレベルでの精度が得られなかったため,キャリブレーション手法の自動化などの改善を行った.一方,入力デバイスに関しては,ユーザの把持動作に基づく変形形状の切り替えではなく,デバイス先端形状をユーザが自ら作成し,それをコンピュータで取り込むことにより,任意形状で加工が可能となるシステムを実装した.実装したプロトタイプを用いて簡易的な使用感評価を行ったところ,プロジェクションによる形状変形の様子を確認しつつ,インプットデバイスの先端形状を変化させた時の削れ方の違いも確認できることが分かった.しかし,実物体および入力デバイスのトラッキング精度が十分とは言えず,トラッキング手法自体を変更する必要性があることがわかった.
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