本課題では,運動・感覚ループを代理ロボットと共有することで代理ロボットに乗り込む体験を成立させるテレイグジスタンスにおける身体像のスケール変換課題を対象としている.本年度も昨年に引き続き,スケール変換時の身体スケール変容課題としたが,操縦対象をドローンではなく,小型二足歩行ロボットに変更した実験を行い,スケール変換における主要因を明らかにした.本課題では身体スケールの認識に自己運動が寄与していると考えているため,操縦者が等価的に体験する重力を変動させた条件下において,二足歩行ロボットに操縦者が乗り込んだ状況で歩行実験を行なった.そこで小型二足歩行ロボットに対して,等身大換算をした場合に重力加速度が1Gとなる条件であれば,操縦者の身体像を変容させることなく操縦できるはずであると仮定した.一方で,小型二足歩行ロボットに乗り込むと,透過的に過大な重力加速度条件下にあるように操縦者には体験される.そこでスケール変換要因として重力加速度を1Gと4G条件を比較した.その結果,操縦者にとって等価に1Gを感じさせる条件下において歩行の成功率が向上した.歩行が成功した場合は数歩前進したのち転倒していた.歩行に失敗した場合は一歩を踏み出すまでもなく転倒した.二足歩行時には小型二足歩行ロボットから視覚情報を操縦者に伝送していたことから,操縦者は視覚誘導性自己運動感覚に基づく姿勢反射を継続しながら歩行を行なっていたと考えられる.今回実験に用いた歩行実験中の身体像は変容を確認するほどの長時間ではなく,操縦者は変容前の身体像に基づき歩行運動を行なったと考えられる.
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