研究実績の概要 |
本年度の研究においては、実応用に即した句の意味計算技術の構築を目標として、以下の三つの課題を進めた。 (1) 述語の項構造解析:実際の意味解析技術である述語項構造解析において、前年度に行った最先端のシステムにおける現状の問題点の分析結果にしたがい、計算モデルの改善を行った。具体的には、ニューラルネットワークを用いたモデリングにより、これまで人手により設計されていた特徴量の組み合わせ方法を自動学習する手法と、これまで記号的に表現されていた特徴を数値ベクトルとして表現する手法の導入により、これまでの解析手法と比べ、大幅な性能改善を得た(松林,乾 2017)。 また、このモデルをさらに発展させ、文中の複数の述語に対して、比較的単純な構造を持つ項を事前に分析し、その情報をより複雑な構造を持つ項を特定するための事前情報として用いる計算モデルについて開発を進めた。 (2) 項の選択選好モデル: 句の類似性モデルの構築作業の一部として、述語とその項となる名詞の間の意味的な関係を表現する選択選好モデルを題材として、単語の分散表現にもとづく句の意味表現モデルを用いて、述語と項の組み合わせに関する妥当性や意味的な類似性を表現する計算モデルを構築し、その成果を国際会議論文として報告した(Inoue, Matsubayashi, et al., 2016)。 (3) 意味の類似性を考慮した文章構造解析モデル:句の意味の類似性や文脈上の一貫性を計算する技術に関する応用研究の一環として、歌詞における文章構造を題材として、類似するフレーズの分布に基づいて構造の切れ目を判定することで、歌詞のみの情報から楽曲におけるAメロ、Bメロ、サビ等の音楽的境界を認識する技術を構築した(Watanabe, Matsubayashi, et al., 2016)。
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