研究実績の概要 |
本年度は研究期間を一年延長し、研究成果のうち最終年度に未発表・未公開であったものを発表・公開した。 (1) 述語の項構造解析:前年度に開発した解析器を事前の構文解析処理を必要としない end-to-end と呼ばれる方式に改良し、国際会議論文として発表した(Matsubayashi and Inui 2018)。このモデルでは、文中の複数の述語間の相互作用をモデル化することで、省略表現を伴うなどのより解析難易度の高い述語の解析精度向上させることに成功した。その後さらに、このシステムを通常の述語のみならず述語が名詞化されたものの項構造も解析できるよう拡張し、そのコードを一般公開した。 (2) 絵本に対する言語獲得分析: 日本語のように省略表現が多用される文脈において、子供が言語獲得を行う際に、多言語で言われているような文法推論に基づく補助現象が同様に起こりうるかを分析し、前年度に実施した絵本に対する述語項構造アノテーションデータに基づいて、項の省略が頻繁に起こっている状況下でも視覚情報(絵に生き物が出ているかどうか)等の他の情報を共に考慮することで、少なくとも潜在的には同等の文法推論を行えることを客観的に示した。この成果は国際会議論文として発表予定である(Orita, Suzuki, and Matsubayashi 2019)。 (3) マルチモーダル情報を考慮した文章生成モデル:前年度に開発した「入力されたメロディの並びや休符の位置などの音楽的構造と一貫性を持つような歌詞の生成モデル」を国際会議論文として発表した(Watanabe, Matsubayashi, et al. 2018)。また、日本47都道府県の方言を標準語に翻訳する多方言翻訳システムに関する成果を国際会議論文として報告した (Abe, Matsubayashi, Okazaki, and Inui 2018)。
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