研究課題/領域番号 |
15K16052
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
福井 健一 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (80418772)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | データマイニング / 系列 / クラスタリング / 地震 |
研究実績の概要 |
本研究は,各種センサから計測・観測される多次元の事象系列データから,事象間の因果性を発見する新規データマイニングアルゴリズムを創出することを目標としている.申請者は以前,時系列上で共起する事象の対とデータ空間上のクラスタを同時に考慮して共起パターンを抽出する共起マイニング(Co-occurrring Cluster Mining: CCM)を考案した.しかしCCMでは,系列上の事象間の共起性判定において,区間内の事象の発生順序や時間間隔は考慮されていないため,CCMで得られるパターンは相互作用関係を表すものの,時間的な因果性は表していなかった.そこで,本年度はCCMの枠組みにおいて,ベイズ推定により事象の発生時間間隔を推定し,時間軸上で区分化を不要としたクラスタ系列マイニング(Cluster Sequcence Mining: CSM)を提案した.CSMでは,事象の対の発生時間間隔がある確率分布に従うクラスタの対を抽出することが可能となった. 実験では,提案法のパターン抽出精度およびパラメータの影響を人工データにより定量的に評価を行った上で,地震発生パターン抽出への応用も行った.東日本大震災以降の日本全域の震源リストデータに対してCSMを適用した結果,震源付近の海溝型地震間のパターンや福島周辺の群発地震などのパターンなどの説明可能なパターンが多く抽出された.大規模地震後の地震活動において,CSMにより地震発生時間間隔の確率分布の推定と同時に,因果性の強い領域を特定できる可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りベイス推定を用いた系列クラスタのマイニングアルゴリズムを構築できたものの,現状,観測データからの事象間の発生間隔の算出において,直近の事象を対の事象として扱って,発生間隔のベイス推定を行っている.本問題においては,データ空間上の複数クラスタの抽出と,クラスタの対に含まれる事象同士の発生間隔を同時推定するため,直近の事象が必ずしも対応するクラスタの事象とは限らない.そのため,観測データからの事象間の発生間隔の算出方法に改善が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
まず前述の事象間の対応問題において,対応事象の候補を多数生成もしくは,DPマッチングのような伸縮性を考慮して複数事象との対応関係を候補として得るように修正を行う.一連の提案法をジャーナル論文として成果をまとめると共に,来年度はもうひとつの重要応用領域である燃料電池の損傷評価への応用も進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験は概ね順調に進んだものの,当初予定していた論文投稿が遅れたため.
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次年度使用額の使用計画 |
主にジャーナル論文の掲載料,国際会議への参加・旅費,国内学会への参加・旅費,および国内の研究協力者との打合せのための旅費に使用する
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