研究課題
平成28年度は、演奏モデルと音楽言語モデルの統合による自動採譜手法への応用に関して大きな進捗があった。一つはポリリズムといった多声音楽での楽譜および演奏の特徴を記述するために有効な出力合流隠れマルコフモデルを用いるもので、多声部構造を持った楽譜の生成モデルおよび声部間で緩い同期を持った演奏の生成モデルを構築して、MIDI演奏から楽譜に変換するリズム採譜の問題へ応用した。この結果、採譜精度において従来法を大きく上回ることが示され、今後は音響信号からの自動採譜への応用も考えられる。また、音楽の反復構造を記述するため、音形の反復と変形をベイズ階層隠れマルコフモデルで記述する定式化を行った。これにより楽譜や演奏に含まれる典型的な音符パターンとその変形を教師なし学習の枠組みで捉える手法の開発を行った。単旋律メロディーに対するリズム採譜問題で採譜精度の向上に有効なことが示された。今後は多声部音楽モデルとの統合が課題である。この他、従来の演奏誤りモデルを拡張し、MIDI演奏データと楽譜から演奏誤りを自動検出できる手法を開発した。これを自動伴奏技術と組み合わせて、ピアノ曲で演奏が困難な箇所をより容易に、しかし再現される音楽は同じになるようにする、演奏支援技術への応用を行った。また、ポピュラー音楽などの音響信号から伴奏音とソロ歌唱音を分離して、ユーザーの歌唱音とのマッチングを行い、リアルタイムでテンポを変化させてユーザーの歌に伴奏を同期させる技術の開発も行った。歌声に対する自動採譜技術や音楽文法モデルの開発などの成果もあった。研究目標としていた演奏データの構築に関しては、60楽曲(フレーズ)× 3演奏者以上のデータ収集・整備を達成した。また、上記研究結果に基づき、効率的に演奏データ整備が可能な演奏アラインメントツールの開発を行い、近々公開予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 7件) 備考 (1件)
Journal of Robotics and Mechatronics
巻: 29(1) ページ: 125-136
10.20965/jrm.2017.p0125
IEEE/ACM Transactions on Audio, Speech and Language Processing
巻: 25(4) ページ: 794-806
10.1109/TASLP.2017.2662479
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