研究課題/領域番号 |
15K16060
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
新里 高行 筑波大学, システム情報系, 助教 (00700163)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 群れ / 自己組織化 / 創発 |
研究実績の概要 |
昨年度は鮎の実験と理論的解析を中心に行った。その中でも主要な結果は以下の通りである。第一に、少数個体と単数個体の鮎の振る舞いの違いを明らかにした。我々は、「鮎が群れをなし質の異なる振る舞いを行う」という現象を単なる多数個体という問題に還元することはせず、少数個体でもその質の異なる振る舞いは得られるはずであるという仮定をたてて実験を行った。そこで、まず鮎は単数個体でも複数個体でもレヴィウォークをしていることを解析的に正確に明らかにした。レヴィウォークは、空間探索における餌の探索と搾取のバランスを最適にする行動様式として知られており、鮎は個体数に関係なく最適な探索を行っていることを明らかにした。これは、レヴィウォークが相互作用に対して頑健であり「探索方法」という意味では個体と集団に差異はない、ということを意味している。 一方で、我々は鮎は個体でも集団でも最適な探索を行っているにも関わらず、個体たちの探索範囲は決定的に異なることを見出した。これは個体の時と集団の時では全体のあり方が異なることを示唆している。以上の研究結果は、京都で行われた国際会議SWARMで発表され、OUTSTANDING PAPER AWARDに選出された。さらに、現在は鮎が相互作用してる個体数を制御系の理論をもとに推定するなどの研究も同時に行っている。
第二に、様々な場所での研究成果を発表することで共同研究も現在増えつつある。我々はレヴィウォークの研究を通じて防衛大の白川氏と粘菌の探索問題を共同研究することになった。一部の結果は論文として現在作成中であり、鮎の研究を通じて異なる生物の振る舞いを再評価する、という新しい研究にも挑戦している。また、群れのモデルは, Vicseckの提案する同期モデルが主要なことから、我々は別の視点から群れのモデルを構築し様々な媒体で発表している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、当初予定していた多岐的な機能を有する群れを「探索範囲の拡張」や「個体的視点と全体的視点の差異」という点から考察を進めている。昨年度は、鮎の調子が悪くうまくデータが取れなかったため、一昨年前のデータを主に使って分析することとなった。しかし、今までのデータに対して新たな視点を持ち込み、これまで群れの性質では言及されてこなかった新たな機能を見出したという点では計画通り進んでいると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、実験データを初期の段階でより多く集め、平成27度の結果を受け継ぎつつさらに展開させていく予定である。
具体的には、「個体的視点と全体的視点の差異」が群れの探索以外の機能に貢献していないか。 また、鮎の運動の非同期性が互いの運動の予期に重要な役割を果たしているのではないかという視点を中心に研究を行っていく。
|