本研究の項目(A)では体内時計や脳に見られる振動現象に関する理論的課題に取り組んでいる.27年度には,時差ボケ現象を説明するためのモデル構築を行った.このモデルを用いると,日本からアメリカ西海岸などといった東向きの長距離旅行旅行に対応する8時間の時差を与えるときに,その前日に4時間の時差を先行して与えることにより,時差ボケから回復が早まることが予測された.実験研究者と協働でこの理論的予測の実験検証結果を解析し,理論的に予測した方法が時差ボケの解消時間が有意に短くなることを実証することができた.この結果について論文を投稿し,国際学術誌であるScientifc Reportsでの掲載が決定した.現在は,さらに,このモデルを用いて時間シフト労働者のスケジュール提案手法を検討している.そのため,モデルのパラメータを各個人の特性に合わせるパラメータ推定方法が必要になる.また,本研究の項目(C)では特定の機能を最適化する振動子ネットワークのネットワーク構造の探求に取り組んでいる.ゆらぎの強度が不均一な振動子集団において,同期度をネットワーク構造から求まるラプラス行列の固有値・固有ベクトルと関係づけることに成功した.これにより,最適ネットワーク構造を求めることができた.得られた結果は容易に解釈しづらいものである.信頼できる振動子をネットワーク上のどこに置くべきかについての設計原理を提案できる理論である.現在,投稿準備中である.
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