本研究では、自己組織化マップと呼ばれるニューラルネットワークの拡張モデルに基づき、微生物群集と環境の相互作用を明らかにする微生物群集解析手法の開発を目的している。微生物群集解析は、微生物の遺伝子情報と環境データから、環境要因による微生物群集構造(微生物の数と種類)の変化を明らかにする探索的データ解析である。本研究では、微生物群集データ(DNA塩基配列に基づく距離データ)と環境データ(多変量データ)を統合する異種情報統合型の高階自己組織化マップについて検討している。平成29年度は、昨年度までに検討した微生物群集データに付属する2次的な情報を効果的に学習に反映させる正準相関分析に基づく方法を、申請者がこれまでに開発している距離データを取り扱う距離型高階自己組織化マップに適した形へと改良した。具体的には、距離型を含む自己組織化マップと高階自己組織化マップにおいて、2つのデータ集合から共通の要因を推定するための新たな学習アルゴリズムを開発した。開発したアルゴリズムでは、同じ対象から得られたデータに対して勝者が一致するように、2つのデータ集合を学習する自己組織化マップまた高階自己組織化マップが、近傍係数を介して、相互に影響を与えながら、交互に学習を行う。人工データを用いた実験により、期待通りの結果が得られることを確認した。また、実際の微生物群集データを用いた簡易的な実験において、開発したアルゴリズムの実データへの適用可能性を確認できた。今後は、様々な実データを用いた検討が必要である。
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