本研究では,ロボットによる柔軟物操作の研究の一環として高度な紙の操作を実現することを目指し,単純な折り線付け(谷折り)のみでは達成できない「袋折り」などの実現を目的にした.具体的な課題として,紙の状態をセンシングする技術,紙を適切に扱うためのロボットハンドの開発,および紙操作を公理に基づき記述可能なシミュレーターの開発を行った.特に紙は薄く,折り重なっている場合もあり,一般に状態のセンシングが難しいため,紙に力を加えるなどしながら能動的に紙の状態を取得するアクティブセンシング技術を開発した.本研究で開発した手法として,頂点合わせ操作,ずらし操作,クセ付け操作,光源変化による折り線検出があげられる.これらのアクティブセンシング技術を含め,対象とする折り作業に必要となる個々の紙操作を実現するため,必要な機能を抽出し,特に指先形状や材質,自由度を工夫したロボットハンドを開発した.さらに,高度な紙操作のためには,どのような操作によりどのような折り目がつくのかをシミュレート可能なシミュレーターが必要となる.本研究では折り紙公理と呼ばれる数学理論をもとにして紙の状態および操作を記述しているが,その記述に基づいて折りをシミュレートできるシミュレーターを開発した.このシミュレーターを利用することにより,人間が実際に紙を折った画像のみから,公理に基づき折り作業を抽象的認識することが可能となり,折り作業の見まね学習の可能性が開けた.これらの技術を総合することにより,最終的に袋折りや中割り折りといった高度な紙折り作業をロボットにより実行させることに成功した.
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