本研究は,昆虫の視覚神経回路に学び,視覚情報から自己の運動状態や飛行経路,周囲との距離を把握するシステムを開発すること,及びこのシステムを活用して屋内未知環境を探索する自律飛行ロボットを開発することを目的とした.期間全体を通じて実施した研究の成果は以下の通りである. (1) イメージセンサによって得られた動画像から,効率よくオプティカルフローを取得するアルゴリズム,並びにこのオプティカルフローから6自由度の自己運動を推定するアルゴリズムの開発を行った.このアルゴリズムを,(2)で開発した画像処理回路を用いて実装し,(3)で構築した実験環境によって評価した.結果,本アルゴリズムが自己運動の識別を行えることを確認した. (2) ドローンに搭載可能なサイズと消費電力で,目的とする画像処理が行える電子回路ボードを作成した.本回路ボードは,イメージセンサを接続できるため,画像の取得と同時に処理が行える.画像処理を効率よく並列に行えるよう,本ボードにはFPGAを搭載した.また,本研究のアルゴリズムにおいて,オプティカルフローの取得に必要な,標準偏差の大きなガウシアンフィルタリングが行える回路をFPGAに実装した.これにより,実時間での出力検証が可能となった. (3) 開発したアルゴリズムの動作を検証するため,(2)の回路ボードに任意の回転運動を加える装置や,(2)の回路ボードを実際に飛行させるドローンを,3Dプリンタを活用して製作した.これらを用いて,(1)のアルゴリズムの定量的検証や,実環境での動作の検証を行った.
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