研究課題/領域番号 |
15K16075
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
飯尾 尊優 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, その他部局等, その他 (70642958)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒューマンロボットインタラクション / 指示物体認識システム / 行動の引き込み |
研究実績の概要 |
当該年度では研究実施計画に基づいて,指示物体認識技術の確立と確認行動生成アルゴリズムの構築に取り組んだ.また,上記技術を導入した指示物体認識システムの開発と評価実験も進めつつある. 具体的には,指示物体認識技術について,環境中に設置されたマイクロフォンと三次元距離センサから,音声・指さし方向・顔向きを認識し,その結果から各物体について指示された可能性を示す確率(確信度)を算出するシステムを構築した.このシステムの新規性は,ユーザの指示行動に指さし動作がなくても,顔向きから指示対象となっている物体の存在する範囲を限定することによって,指示物体推定の精度を向上させる点にある. 確認行動生成アルゴリズムの構築について,指示物体推定の結果と物体の名前や色,位置などの環境情報から,適切な情報量で構成される確認行動を生成するアルゴリズムを構築した.従来の研究では,適切な情報量で構成される発話内容を生成するアルゴリズムに限られていたが,本研究では発話内容に指示動作も含めた確認行動を生成するアルゴリズムを構築した点が新しい. 上記,指示物体推定技術および確認行動生成アルゴリズムを導入した指示物体認識システムのプロトタイプを開発し,確認行動生成アルゴリズムにより指示物体推定の精度が向上するかどうかを検証する実験を行った.そして,確認行動生成アルゴリズムによりユーザから適切な情報量の指示行動が引きだされ,指示物体認識の精度が向上することを明らかにした. 本研究成果は,実環境で活動する社会的なロボットとの自然なマルチモーダルインタラクションの設計に役立つ重要な知見である.この結果は,人とロボットのインタラクションに関する総合的な国際シンポジウムRoMAN2015で採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
指示物体認識技術の確立および確認行動生成アルゴリズムの構築はすでに達成した.これは当初の研究計画に記載したスケジュールのとおりである. また,指示物体認識システムの開発と評価実験を進めつつある.すでにいくつかの予備実験を実施しており,今後の詳細な実験を実施するための準備は整っている. 以上の事から,研究はおおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
現在,本研究は当初の研究計画に示した通りに順調に進展しているため,研究計画の変更はない. 今後,構築された指示物体認識システムを用いて,確認行動生成アルゴリズムの有効性を評価する実験を実施する. 具体的には,ロボットの確認行動とユーザの指示行動の関係性に関する精緻な分析や,明示的な指示方法の依頼をする場合と暗黙的に指示方法を引き込む場合との比較などを行う予定である.ロボットの確認行動とユーザの指示行動の関係性に関する精緻な分析では,それぞれの対のデータを収集し,その共起関係についての分析を進めることによって,確認行動生成アルゴリズムの有効性について検証する.また,明示的な指示方法の依頼と暗黙的な指示方法の引き込みの比較では,指示物体認識誤りの発生回数,人の指示発話の情報量,人のロボットに対する印象などを評価することによって,引き込みを利用した指示物体認識システムの有効性を明らかにする.
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