本研究では,人間の感性情報を脳活動情報から定量化するにあたり,学習や注意などによって生じる脳活動の変動,遷移のメカニズムを明らかにすることである.人が外的な刺激に対して感じる嗜好や快不快などの感性的な反応は,それまでの経験や人の精神状態,経時的に変化する環境の影響(本研究ではこれを文脈と呼ぶ)などによって変容しやすいため,これらの影響を明らかにすることで,脳活動からの感性情報のデコーディング精度をより向上させることが出来ると考えられる. 昨年度はヒトの持続的注意の高低によって,快/不快の強さが快時と不快時で異なる影響を受けることを被験者実験で確認した.本年度はそれらの快不快を含めた脳活動における感性情報の定量化手法について検討し,経時的な変化や異なる領野の活動を統一的に扱うための枠組みの開発,および検証を行った.具体的には,呈示刺激に対する脳活動パターンの相関からRepresentational Similarity Matrix (RSM)を計算,MDSによって可視化する手法を用いた.脳活動を脳活動パターンのベクトルではなく,刺激同士の相関をとるRSMに変換することで,通常のデコーディングでは処理することが難しい異なる領野における活動パターンの違いを吸収することができ,また経時的な変化の比較,ひいては被験者のグルーピングなども容易となる.本手法によって脳活動上の表象を可視化できること,また,それによるデコーディングの成績が既存のデコーディングとほぼ同等の成績を示すことを確認した.
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