今年度は前年度に引き続き、本研究計画の仮説である、脳内可塑性変化の誘導によりもたらされた脳活動の変化が好意度の変化を引き起こすという事象の因果性について、ニューロフィードバック実験とそのデータ解析を中心に行った。前年度の実験で示唆された実験の前半・後半で効果量にやや違いがあったことからフィードバックのタイミングを個々人で変動させる事が必要になる可能性を考慮し、フィードバックのタイミングを個人別に変化させ、仮説上の脳内関心領野である線条体・眼窩前頭野・後部帯状回の活動をフィードバックすることによる脳内可塑的変化と好意度の変化の関連性を調べた。実験の結果からは、上記の関心領野の活動をフィードバックさせた場合に確実に好意度変化を引き起こすとは言い切れないという結果であったが、前年度の結果に比べ、ニューロフィードバックによる効果の確度は増す傾向は見られた。同時に発展研究として、脳波による時間解像度の高いニューロフィードバックを行うために、EEGを用いた好意度ののデコーディング実験も行った。結果として、精度はまだ低いものの機械学習アルゴリズムを用いて好意度をある程度脳波から読み取ることに成功した。特にデコーディングに寄与したのは200msから400msの事象関連電位成分であった。以上の結果から、好意度変化に関与する可能性のある脳活動情報は刺激呈示より比較的短時間の成分であり、時間解像度の比較的低いfMRIにて精度の高いニューロフィードバックを行うためには、時間解像度に優れるEEGなどに由来する時間成分情報の使用や、近年発展しているミリ秒単位でのfMRI高速撮像法による活動量の抽出が必要になることが示唆された。
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