研究課題/領域番号 |
15K16081
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大上 雅史 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (50743209)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 中規模ペプチド / アミノ酸配列 / タンパク質間相互作用 / 構造インフォマティクス / MEGADOCK / アミノ酸相互作用プロファイル |
研究実績の概要 |
低分子創薬からの脱却を目指して,中分子=数残基から十数残基のペプチドが創薬研究において注目されている.しかしながら,さらに大きい規模である50~150残基程度のペプチド分子(中規模ペプチド)においては,バイオインフォマティクス分野は未だ構造的な解析技術を有しておらず,解析手法・予測手法の確立が求められている. 本研究では,このような中規模ペプチドを扱うための情報学的な解析手法を確立するために,中規模ペプチドの構造モデリング,中規模ペプチドの機能部位予測,中規模ペプチドとタンパク質の複合体モデリング技術の3点について並行して開発を進める.特に機能未知であるペプチドに対して相互作用可能性のあるタンパク質の予測を可能にすることが本研究の目的である. 本年度ではペプチド構造モデリングと複合体モデリングについて焦点を当てた.15残基程度の構造既知のペプチドを用い,アミノ酸配列情報から実際に既存のモデリングツールでどの程度相互作用時の構造が再現されるかを調べた.その結果,大半のペプチドにおいて相互作用時の構造がうまく再現できないことを確認した.一方,それらのペプチドモデル構造(decoy)を複数用いて対象のターゲットとなるタンパク質に対してMEGADOCKソフトウェアによって相互作用計算をしたところ,複数の相互作用計算の結果から正規化などを行うことによって,正解位置との距離基準を満たす位置へ相互作用するモデル(near native decoy)が得られることが確認された.また,そのようなモデルを抽出するための方法として,アミノ酸相互作用プロファイルを用いる方法を新たに提案した.これらの結果からペプチドモデル構造の生成段階にフィードバックを行う方法を考案し,次年度で検証を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である,機能未知ペプチドに対して相互作用可能性のあるタンパク質の予測を可能にするため,本年度はペプチド構造モデルの計算手法開発を行い,当初の計画通りに進めることができた.また,モデル選択のためにアミノ酸相互作用プロファイルが有効に働くことが新たに分かり,実際にタンパク質間相互作用やタンパク質-ペプチド間相互作用において結果を解析するところまで進めることができたため,本研究はおおむね順調に進展しているものと判断する.
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今後の研究の推進方策 |
中規模ペプチドを扱うための情報学的な解析手法を確立するために,中規模ペプチドの構造モデリング,中規模ペプチドの機能部位予測,中規模ペプチドとタンパク質の複合体モデリング技術の3点について並行して開発を進める.特に次年度ではさらに残基数が大きくなった場合のケースに対応するため,天然変性タンパク質の情報を用いたモデリング手法の開発を行う.天然変性領域の実験的な情報が蓄積されているDisProtデータベースの利用を想定しているが,データ数の蓄積が少なく充分なモデリングが行えない場合は,天然変性領域を計算によって予測するツールの利用を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
開発用PC,およびメモリやストレージなどの少額ハードウェアの価格が下がったことにより,同等性能品を安価に手に入れることができたため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,次年度に利用する大型の並列計算機の利用料金に充当する.特に,次年度に利用する並列計算機のリソースはその時点で得られている公共データ量にも依存するが,データ量が加速度的に増加している傾向にあり,その分計算機の利用料金も必要になると想定される.
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