本研究は、中分子創薬の効率化を目指して、特にペプチド分子に着目した創薬支援研究を実施することを課題とする。ペプチド分子を扱うための情報学的な解析手法を確立するために、ペプチドの構造モデリング、機能部位予測、ペプチドが標的とするタンパク質間相互作用の構造モデリング技術および予測技術について並行して開発を進めてきた。 本年度は、昨年度に続いてペプチド分子とタンパク質の結合に係る物理化学的性質の予測に焦点を当てた。昨年度までの結果から、既存のモデリングツールでは15残基程度のアミノ酸配列情報からペプチドの構造(配座)は正しく再現することは困難であることを確認しているが、一方でそれらのペプチドモデル構造を複数用い、対象のターゲットとなるタンパク質に対してMEGADOCKソフトウェアによる相互作用計算を実施したところ、正解配座との距離基準を満たす部位へ相互作用するモデルが効率よく得られることを確認できた。そのようなモデルを抽出するための方法として相互作用プロファイルベクトルによる解析手法を提案し、現在までに複合体10例における検証を完了した。これらの結果から、一定の構造集団(構造サンプリング)を用いることで、完全に正しい構造モデルが得られなくとも、相互作用親和性と相関するパラメータが得られる可能性があることを示した。 また、ペプチドが標的とするタンパク質間相互作用を列挙するためのツール整備として、新たに予測されたタンパク質間相互作用情報を蓄積したデータベースMEGADOCK-Webを構築した。MEGADOCK-Webはおよそ3000万件のタンパク質間相互作用予測の結果が収録されており、Molmil分子ビューワによるインタラクティブな構造可視化、KEGGパスウェイとの関連付けなどによって標的候補分子を効率よく検索することができるようになった。
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