研究課題
近年、複数の遺伝子を組み合わせた人工生命システムの構成を行なう構成的アプローチから生命を構成する仕組みや原理の解明を試みる研究が行なわれている。また、累積した分子生物学的知見と技術の発達から、ゲノム操作および合成技術の発達が目覚しく、全ゲノムの合成も可能となった。本研究は、複数の遺伝子の組み合わせから構成される人工ゲノムの合成を通じてそれらの研究の基盤技術の発展に貢献する研究である。当該年度までに、無細胞翻訳系中において発現させた複数種類の遺伝子が協同することで機能が発揮される系の開発を行なった。さらに、無細胞翻訳系中において、昨年度までに構築していた各遺伝子から発現するタンパク質合成量の改善に成功し、昨年度よりも多種の遺伝子発現を同時に検出可能な系の構築に成功した。次に、現在よりも高度な遺伝子発現制御の実現に必要である新規の人工遺伝子回路の構築を試みた。その結果、新規の遺伝子を用いた、ネガティブフィードバックを行なう人工遺伝子回路の構築に成功した。得られた新規の人工遺伝子回路の詳細な特性については現在解析中であり、数値シミュレーションによる解析も行なう予定である。既知の人工遺伝子回路と新規に構築した人工遺伝子回路を組み合わせて用いることでさらに多種の遺伝子を同時且つ均等に発現させる系の確立が可能となるだろう。これらの成果の一部は、国内外の学会において発表した。得られた成果の一部は、査読付論文誌に投稿予定である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、前年度までに構築した複数種類の遺伝子を組み合わせることで、無細胞翻訳系中において発現させた複数種類の遺伝子が協同し機能が発揮される系の開発を行なえた。また、遺伝子発現制御の高度化を目的とした新規の人工遺伝子回路の構築に成功した。これらの成果から、研究がおおむね順調に進展していると判断した。
更に多種の遺伝子から発現するタンパク質が協同することにより機能が発揮される系の開発を試みる。その際は、数値シミュレーションを利用した解析から系の微調整を行なう。
予想よりタンパク質発現量の改善や新規人工遺伝子回路の構築に時間を要したためである。
人工遺伝子回路の機能解析と数値シミュレーションを次年度に行なうとし、未使用額はその経費に充てることとしたい。その際は、新たにオリゴDNAを多数用意する必要がある。また、研究成果の学会での発表や論文発表も予定しており、この費用にも次年度使用額を当てたいと考えている
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
Journal of Japanese Biochemical Society
巻: 89 ページ: 211-220
10.14952