研究課題/領域番号 |
15K16086
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
稲垣 圭一郎 中部大学, 工学部, 講師 (10568942)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | モデルんシミュレーション / 小脳 / 運動学習 / 前庭系 / 空間定位 / 自己運動感覚 |
研究実績の概要 |
当該年度は,小脳における運動の制御・学習メカニズムとその柔軟性を探ることを目的とし,正弦波刺激を対象とした前庭動眼反射(VOR)時の眼球運動とその学習を再現可能な小脳数理モデルを左右頭部方向選択学習および周波数選択学習課題をシミュレート可能なように拡充した.具体的には,プロトタイプとして構築されていた小脳片葉両半球を詳細に記述した数理モデルにおいて左右頭部方向選択学習のシミュレーションを行いリスザルによって記録された小脳プルキンエ細胞ならびにリスザル・金魚によって得られている眼球運動を再現できるように構造の調整ならびにパラメータ調整を実施した.これによって,行動実験で確認されている眼球運動ならびにプルキンエ細胞応答を詳細に再現することに成功した.こうした進捗により,左右頭部方向選択学習および周波数選択学習課題を評価可能な小脳モデルは,一通り完成し,次年度以降は小脳内に発見されている可塑性の記述・変更を行うことで同学習課題に関する小脳内部のメカニズムが明らかになるものと考えている. 一方で,小脳構造の均一性を生かし,同小脳片葉モデルの入力構造を変更して小脳虫部モデルへ拡張し,提案していたVORのみならず,虫部で実現されると考えられている並進・傾き運動の識別メカニズムについても評価を実施した.こうして構築した数理モデルにおいても,アカゲザルで確認されている並進・傾き運動競合刺激時において,並進運動のみに選択的に応答するプルキンエ細胞応答の再現に成功した.これまでに並進・傾き運動の識別メカニズムは計算論としては明らかにされているもののその詳細は不明な点が多く,本研究で付随的に構築したモデルによりシミュレーションを行うことで,小脳虫部における詳細な並進・傾き運動の識別メカニズムに言及できるものと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
左右頭部方向選択学習および周波数選択学習課題を評価する数理モデルの構築が当該年度の大きな目標であるが、本年度ほぼこれを達成している.一方で,さらなるモデルの応用展開として小脳虫部のモデルの構築を実施し,小脳虫部における並進・傾き運動の識別課題の評価も追加して実施している.こうしたことから区分(1)とした.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,本年度構築した右頭部方向選択学習および周波数選択学習課題を評価可能な小脳モデルに対して小脳内に発見されている可塑性の記述・変更を行うことで同学習課題に関する小脳内部のメカニズムの評価を実施する.小脳内部のメカニズムを評価するにあたっては,可塑性の役割のみならず,例えば抑制性介在ニューロンの役割などに言及することが重要である.こうした抑制性介在ニューロンの役割評価は課題として挙げられていなかったが次年度は構築した小脳モデルにて評価をする必要があると考えている 併せて本年度あらたに小脳虫部における詳細な並進・傾き運動の識別メカニズムを評価可能な小脳モデルも構築していることから,当初の計画に変更・追加する形で同メカニズムの評価も合わせて実施する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
以下の理由により次年度への繰り越しが生じている.1.MATLABおよびそのツールボックスの更新費用を計上していたが,所属大学が包括ライセンスを締結したことにより,更新の必要がなくなったこと、2.当年度は、モデル構築およびその完成に主眼をおいて研究を進めたことから実験系に割り当てていた予算が未使用とったこと3.プロトタイプモデルのパラメータ調整を主として実施したことから、その大規模シミュレーションを実施していないためワークステーションの購入を控えたこと
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次年度使用額の使用計画 |
左右頭部方向選択学習および周波数選択学習課題を評価する数理モデルの構築をほぼ終えていることから、次年度において大規模シミュレーションを実施するためのワークステーションを購入予定である。また、小脳内部のメカニズムを評価するにあたっては,可塑性の役割のみならず,例えば抑制性介在ニューロンの役割などに言及することが重要であることから,この評価実験に必要な実験器具の購入を行う予定である。
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