研究課題
本研究では、生物画像を想定した汎用的なイメージアライメント法の開発を行うことを目的としている。イメージアライメントは、異なる条件下で計測された複数の画像を同一の座標系に変換することで、定量的比較を容易にする技術である。一般には、アフィン変換やBスプライン関数などで画像の変形過程をモデル化し、2種類の画像の類似性(2乗誤差など)を最小にするパラメータを推定することで、位置合わせを達成する。しかしながら、医療画像や生物画像の解析では、血管や神経突起のような細長く複雑な画像同士を比較するシーンが頻繁に発生する。このような状況では、従来のアライメント手法は正常に機能しない。そこで本研究では、カーネル密度推定によりデジタル画像を連続な関数で近似することにより、アライメント問題を連続関数の最適化問題として新しく定式化し、EMアルゴリズムに基づく安定的な最適化プロセスを実現するアライメント手法の開発を行った。前年度までに、2次元の生物画像を想定したアルゴリズムのプロトタイプの実装を完了した。今年度は、計算時間のボトルネックを解消するため、制御点のアダプティブ配置と計算に用いるピクセルの逐次サンプリングを導入した。これにより、計算時間を従来の1/3程度に抑えることができ、3次元画像への適用も視野に入った。血管や神経突起を模したテストデータを生成し、提案手法と従来手法の性能比較を行った。従来手法は、elastixやMIRTなど、広く用いられている非剛体レジストレーションライブラリから複数選択した。実験では、提案手法が既存手法と比べ、血管状の構造物に対し高い精度で位置合わせできることを示した。本研究で開発したアライメント手法の要素技術については、神経科学分野におけるプロジェクト研究やコンピュータグラフィックス分野におけるモデリング技法など、他分野の応用研究にも活用している。
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