研究課題/領域番号 |
15K16089
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
齋藤 裕 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門, 研究員 (60721496)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ゲノム3次元構造 / HiC / 3C / エピゲノム / バイオインフォマティクス |
研究実績の概要 |
ゲノムの形成する染色体規模の3次元構造において,複数の遺伝子領域が空間的に近接(共局在)することで協調的な発現制御を受ける例が報告されており,遺伝子制御の新たなパラダイムとして注目を集めている.近年,HiCなどの実験技術の登場によりゲノム3次元構造の大量データが得られるようになったが,遺伝子の共局在について網羅的な解析を行うための情報基盤は整備されていない.そこで本研究は,HiCデータから共局在遺伝子を網羅的に探索する情報解析手法の開発を目的とする.また,この手法を様々な細胞種のHiCデータに適用して,同定された共局在遺伝子に対して公開オミクス情報を活用した機能アノテーションを行い,共局在遺伝子のデータベースを構築する. 本年度は提案手法のプロトタイプを開発して,予備的な実験結果を得る段階まで研究を進めることができた.まず,ハイスループット実験技術HiCによって得られるゲノム3次元構造データに基づいて,遺伝子セットの共局在の強さを評価するためのスコアを設計した.ここでは先行研究において提案されたスコアを改良して,探索アルゴリズムの目的関数として使用できるようにした.次に,高い共局在スコアを示す遺伝子セットを発見するための探索アルゴリズムを設計した.ここでは単純な貪欲探索を試すことにした.開発したプロトタイプ手法の動作を確認するための実験として,SRAに登録されているいくつかのHiCデータから共局在遺伝子の網羅的な探索を行った.さらに,発見した共局在遺伝子に対して,ENCODEのChIP-seqデータによる機能アノテーションを行った.この解析から得られた予備的な実験結果について数件のポスター発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り提案手法のプロトタイプを開発して,予備的な実験結果を得る段階まで研究を進めることができた.また,当初予期していなかった展開として,日本国内において実際にHiC実験を行っているウェット研究者と数件の共同研究を開始することができた.
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今後の研究の推進方策 |
共局在スコアと探索アルゴリズムの更なる検討を行ってプロトタイプ手法を改良する.この手法を様々な細胞種のHiCデータに適用して共局在遺伝子の全容とその組織特異性を明らかにする.解析結果を誰でも利用できるようデータベースとして公開する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は提案手法の完成前にデータベース用のサーバを購入する予定だったが,近年のHiCデータの増加ペースが予想以上であり,データベースに必要なサーバの規模を再検討すべきと考えたため、提案手法が完成する次年度まで購入を待つことにした.
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次年度使用額の使用計画 |
提案手法が完成する直前のタイミングでデータベース用のサーバを購入する.
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