研究課題
ゲノムの形成する染色体規模の3次元構造において,複数の遺伝子領域が空間的に近接(共局在)することで協調的な発現制御を受ける例が報告されており,遺伝子制御の新たなパラダイムとして注目を集めている.近年,HiCなどの実験技術の登場によりゲノム3次元構造の大量データが得られるようになったが,遺伝子の共局在について網羅的な解析を行うための情報基盤は整備されていない.そこで本研究は,HiCデータから共局在遺伝子を網羅的に探索する情報解析手法の開発を目的とする.また,この手法を様々な細胞種のHiCデータに適用して,同定された共局在遺伝子に対して公開オミクス情報を活用した機能アノテーションを行い,共局在遺伝子のデータベースを構築する.本年度は,昨年度に開発した手法を近年測定された高解像度のHiCデータに対して適用して,共局在遺伝子の探索を行った.また,発見した共局在遺伝子をゲノム3次元構造の先行研究において広く用いられているtopologically associated domain(TAD)と比較した.その結果,多くの共局在遺伝子は複数のTADにまたがって存在していることが分かり,本手法がTADよりも網羅的な共局在遺伝子の解析を可能にすることが示唆された.さらに,胚性幹細胞のHiCデータから発見された共局在遺伝子の詳細な解析から,多能性細胞のマーカー遺伝子であるSOX2とDNAダメージ修復に関与する遺伝子群が共局在しているという新たな知見を得ることができた.
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PLOS ONE
巻: 12(3) ページ: e0174699
10.1371/journal.pone.0174699
FEBS Letters
巻: 591(4) ページ: 590-602
10.1002/1873-3468.12572