研究課題/領域番号 |
15K16091
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
北山 大輔 工学院大学, 情報工学部, 准教授 (40589975)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 推薦システム |
研究実績の概要 |
(A) ユーザ行動パターンに基づく推薦理由の明示化では,情報検索システム上におけるユーザ行動履歴を蓄積し,その行動に基づいた嗜好情報を複数パターン生成する方式,およびその嗜好情報パターンに基づき推薦理由を可視化する手法を開発した.キーワードベースの嗜好情報表現に限定する予定であったが,Youtubeの動画情報を用いることでより多様なメタデータを取り入れることが可能であったため,テキスト情報である動画の説明文以外に,プレイリスト情報,評価情報を用いて嗜好を表現するモデルを構築した.また,それらの嗜好に基づく推薦結果と推薦理由を明示化し,その影響の評価を行った.その結果,推薦理由の明示化を行ったほうが推薦理由を示さない場合よりもユーザがそのコンテンツを選択しやすいということ,推薦理由を明示したもの同士では,妥当だと考えられる推薦理由のコンテンツが選択されやすいという知見を得た. (B) ユーザ選択操作に基づくによる推薦方向の予見では,情報推薦システム上において,ユーザが推薦結果を取捨選択する行為に基づいて,その選択行動が推薦結果に及ぼす影響を可視化する手法のうち,取捨選択行為のモデル化に取り組んだ.こちらにおいても,計画していたキーワードベースの手法ではなく,より多様なメタデータを利用できるコンテンツベースのモデルの開発に取り組んだ.具体的には,飲食店情報を用いてユーザの取捨選択行為を用いた嗜好抽出についてモデル化を行った.その中で,テキスト情報のような離散的データの選択/非選択と,数値データのような連続的データの選択/非選択では,嗜好への影響の与え方を変化させるべきであるという知見を得た. 上記以外にも,観光オブジェクト,レシピ,映画,行動表現,コーディネートといった様々なメディアに適応可能とするために特徴空間の構築を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたキーワードベースでの検討ではなく,より複雑なコンテンツベースの手法を検討し,それぞれプロトタイプシステムを構築し,実験を行っている.これらは,国内研究会で2件の発表を行っており,順調に進展している.また,キーワードベースのモデル検討に関して,上位語・下位語関係を用いて,複数キーワードからなるクエリを単一キーワードの等価なクエリを変換する方式について取り組んだ.この方法は,コンテンツベースの手法の中でもテキスト情報に関して,コンテンツ間の関係を分析するために必要となる技術となると考えている.この研究に関しては,国際会議で1件の発表を行っている. 今後,他のコンテンツ,メディアに展開するために観光オブジェクト,レシピ,映画,行動表現,コーディネートといったメディアに対する特徴空間の構築について検討した.これにより,次年度以降の研究を円滑に行うことが可能となる.これらに関しては国内研究会で8件の発表を行っている.これらのことより,おおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
(A) ユーザ行動パターンに基づく推薦理由の明示化に関しては,平成27年度に開発した手法を基に,ベクトル空間モデル等,他のモデルによる嗜好情報表現へ拡張する.より複雑な嗜好情報表現をコンテンツベースの手法に適応することで,27年度の手法への適応を検討する.並行して,複雑となった嗜好情報表現を利用した,詳細な推薦理由の生成手法を開発する.実際のWeb情報検索およびコンテンツ推薦への適応を検討するために,一般的にアクセス可能なWebサーバ上に提案手法を実装し,数十名程度の被験者を用いて,推薦理由の明示化の評価実験を行う.また,数名の被験者に対し,理由明示による情報の選択行動変化の調査を行い評価する. (B) ユーザ選択操作に基づくによる推薦方向の予見に関しては,商品推薦やコンテンツ推薦などに対し,平成27年度に開発した手法を適応する.商品推薦やWebページ推薦では,推薦結果の選択に対し,その後の推薦を予見させる必要がある.そのため,適切な推薦アイテムのシミュレーション手法を開発する.構築したシステムを用いて,数十名程度の被験者を使用し,実際の選択行動に対し提案手法を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
開発したシステムを評価するにあたり,クラウドソーシングを利用することで,評価システムの一部や人件費の一部を削減することができた.そのため,約4万円の次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の研究成果を国際会議で発表することを予定しており,その質を高めるための英文校閲費として用いる.国際会議としては,11月に開催されるiiWAS2016を計画している.
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