本研究では,情報個人化におけるフィルターバブル問題に対し,(A)ユーザ行動パターンに基づく推薦理由の明示化,(B)ユーザ選択操作に基づくによる推薦方向の予見手法の開発に取り組んだ.これらの手法は,平行に進めてきており,(A)に関しては本年度において多様な嗜好表現への対応が可能なように拡張する.また,最終年度において,(C)としてフィルターバブル問題のためのユーザによる多様な情報を取捨選択可能な推薦アルゴリズムを実装し,ユーザに利用してもらい,それぞれの手法の有効性,および情報選択能力の成長モデルとしての有効性を評価した. (A)ユーザ行動パターンに基づく推薦理由の明示化 平成28年度に開発した手法を基に,ユーザの生体情報を用いた嗜好表現,金銭的価値観に関する嗜好表現,ユーザレビューを用いた嗜好表現へ拡張した.より複雑な嗜好情報表現を単純なキーワード表現や,数値表現へ変換することで,開発した手法への適応を検討した.並行して,詳細化した嗜好情報表現を利用した,推薦理由の生成手法を開発した.実際のWeb情報検索への適応を検討するために,一般的な被験者をクラウドソーシングにより集め提案手法を,数十名程度の被験者を用いて推薦理由の明示化の評価実験を行った. (C)フィルターバブル問題のためのユーザによる多様な情報を取捨選択可能な推薦アルゴリズム 最終年度では,(A)と(B)の知見を組み込んだ統合システムを開発した.提案手法を適応したシステムと適応しないシステムを被験者に利用してもらい,フィルターバブルと考えられる嗜好情報の偏りに基づく推薦結果を比較した.その結果,開発したシステムにおいて,ユーザにとって未知であるコンテンツの推薦を行えていることを確認した.
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