本研究の実績として、理論に基づいた地域活性化モデルの有用性について一定の成果を示すことができたことが挙げられる。本研究では、熊本県熊本市を中心に展開されている地域コミュニティブランド(以下、SCB)に関連した取り組みを主な研究対象としたが、研究期間中にも様々な新しい活動が始まったり、地域の主体との協定が結ばれたりするなどしていた。こうした活動の発展は偶然に任せたものではなく、地域コミュニティブランドの17箇条に代表される「共通ルール」に基づいたものであった。単なる成功事例の後追いではなく、きちんとした理論や原則に基づいて地域活性化に取り組むことの重要性は2015年以降の研究では度々指摘されるようになってきており、本研究もその流れに位置づけられるものである。 理論に基づいた共通ルールの中でも特に可能性が示されたものが「専門家集団・技術者集団を積極的に活用」という観点である。SCBでは地域の放送局やプロスポーツチームとの連携がなされており、そのことが活動の裾野を広げることに貢献していた。例えば、地域の大学生が地域のプロスポーツチームの試合を中継し、その様子が地域のメディアに取り上げられるなど、「専門家集団・技術者集団」が関与することによる成果が確認されている。これらは宮崎県小林市で行われた動画制作のプロジェクトにも共通しているコンセプトであり、一部の地域に留まらない有用なアプローチであることが示唆されている。 研究期間全体では、2016年4月に発生した熊本地震の影響で停滞を余儀なくされた面もあったが、復興支援の活動がSCBより発足するなどの当初意図していなかった新しい成果も見られた。補助金に依存しない継続的な活動をもたらす仕組みについては、多くの地域に応用が可能であると考えられる。
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