[研究目的] 少子・高齢化に伴って熟練者の技能を初心者に伝承する機会は減少している.そこで,モーションキャプチャ(MoCap)を用いて技能の「コツ」を解析し,プロジェクションマッピングによって学習者に提示するような学習支援システムを検討する.本研究では,日本の民俗的な楽器である三味線に着目し,三味線の学習支援システムを構築する. [計画の遂行状況] 1)平成27年度は右手にもつバチの動きをヘッドマウントディスプレイ(HMD)に提示する学習支援システムを構築し,三味線の学習支援方法について検討した.本成果は「国際会議ICIRA2016」で発表した.本成果の議論によって,右手に持つバチの動きだけでなく,左手の指使い,三味線の構え方の習得手法について検討を加えた.2)平成28年度は,3Dプリンタを用いてレーザープロジェクタを固定する冶具を造形し,映像の焦点の校正作業などを簡略化した.これによって,プロジェクタを用いて三味線に情報を提示する手法を開発した.当初計画を前倒しし,開発した情報提示手法と簡易型の手指用MoCapを統合して,左手の指使いの学習支援システムを試作した.本結果は,「平成28年度 電気・情報関係学会 北海道支部連合大会」において発表し,議論を深めた.3)平成29年度は,プロジェクタの冶具の改良および,三味線の構え方の特徴について検討し,三味線の構え方を支援するシステムを構築した.本成果は「インタラクション2018」において発表した. [今後の展望] 本研究によって,三味線の撥さばきに加え,左手の指使い,構え方という基本的な技能の学習支援システムに関する知見が得られた.本成果の応用として,それぞれの技能を総合的に学習可能なシステムの開発に取り組んでいる.また,MoCap以外のセンサとの連携,視覚以外の提示方法の検討を通じ,より効果的な学習支援を検討することが挙げられる.
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