研究実績の概要 |
福島原発事故後の2011年6月から実施しているこれまでのモニタリング結果から、沈着直後の土壌中の初期深度分布は土壌の粗孔隙率と関係があり、雨水が速やかに浸透できる土壌ほど、放射性セシウムも下方まで移行している傾向が示唆された。しかしながら、これは8地点のみでの結果であり、一般化のためにはさらなる調査が必要である。そこで、本研究では、日本原子力開発機構(JAEA)主導で実施されている全85地点の広域的な深度分布モニタリング調査地のうち、除染等の明確な人為的撹乱が認められない50地点において土壌サンプリングを実施し、土壌の物理性(三相分布、孔隙率、飽和透水係数)の分析を行なった。調査地はいずれも空の開けた平坦面で、公園や空地である。 JAEAにより2011年12月に実施された放射性セシウムの深度分布調査結果を初期沈着を最も反映したデータとみなし、その緩衝深度α(cm)と土壌の物理性の関係を調べた。その結果、緩衝深度αと粗孔隙率および飽和透水係数の間には、有意な相関係数は得られなかったものの、緩衝深度αを4つのクラス(<0.5cm, 0.5-1.0cm, 1.0-1.5cm, 1.5cm<)に分けて解析したところ、緩衝深度αが大きいほど粗孔隙率が高い、あるいは飽和透水係数が高いという傾向が認められた。このことから、放射性セシウムの土壌中の初期分布は、仮説の通り、水の浸透性が影響していることが示唆される。
|