研究実績の概要 |
本研究の目的は、山体地下水を新たな水資源と捉え、これまで知見が少なかった非火山性の山体地下水の水文・水質学的特性を把握することである。対象地域を水問題が著しいネパールの首都であるカトマンズ盆地とし、盆地北部の山麓に分布する複数の湧水(山体地下水の湧き出し)の水質、各種安定同位体比、年代測定トレーサーについて観測を行った。 これまでの研究実績をまとめると、水量については、雨季の日湧水量が5,000Lを下回る小規模湧水は、乾季に枯れてしまうことが明らかになり、水資源開発における湧水規模の下限を示す指標の取得に成功した。年代トレーサーによる地下水滞留時間の推定によると、湧水の平均滞留時間は数年未満のものから十数年の範囲で、湧水規模が大きいほど滞留時間も大きくなる傾向が示され、山体地下水の帯水層の大きさが湧水規模や乾季における湧水量の維持に大きく影響している可能性を示すことができた。水質については現地の既存の代替え水源(都市域の地下水)より良質であるが、山間部の小規模集落から負荷する局所的な汚染も観測された。地下水汚染と滞留時間の間には因果関係がなかったことから、山地域における局所的な汚染については、湧水の規模や滞留年代にかかわらず発生することを明らかにし、今後の湧水分布地域における水源域の管理に必要な基礎情報を取得することができた。 さらに、カトマンズ盆地内の地下水の予備調査の結果、山地で涵養された地下水が盆地の低地部の市街化計画区域にまで流動(到達)していることを確認し、山体地下水が都市域の水源の重要な起源の一つであることを明らかにした。
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