本研究では中山間地域における河川のリン酸-酸素安定同位体比(δ18Op)の特徴とリン酸の動態について検討した。中山間地域河川と,その比較対象である都市型河川,および平地農業地域河川を対象に河川試料水を採取しそれらのδ18Opを分析した。河川のδ18Opの観測期間内の平均値は平地農業地域河川で高く,中山間地域河川と都市型河川とでは同様の値を示した。一方,中山間地域河川のδ18Opは観測期間内におけるばらつきが高かった。中山間地域河川では先行降雨指標が高い観測日ほどδ18Opが低くなる傾向にあり,高流量時,上流の森林域から低いδ18Opをもつリン酸が下流河川に多量に流入していたことが予想された。
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