東アジア域は多様な人為起源・自然起源のガス・エアロゾルの排出源が存在し、主な組成は硫酸塩・硝酸塩・有機エアロゾル・煤・黄砂・海塩粒子の6種であり、これらがPM2.5を構成している。大規模な発生源が存在する大陸の風下に位置する日本では、黄砂と硝酸塩エアロゾルの内部混合が観測から確認されており、エアロゾルの化学組成や混合状態が非常に複雑であることが明らかとなっている。またその鉛直輸送構造は非常に多様であることが既往研究から明らかとなっている。各成分毎の鉛直輸送構造の解明には数値モデルが非常に有効であるが、一方で観測的手法による数値モデルの検証はエアロゾル種毎の鉛直観測が行われていなかったため、十分に行われていない。近年、ライダー技術の発展によって多波長におけるミー散乱および大気窒素のラマン散乱、偏光解消度の測定が可能となり、より多成分のエアロゾル(散乱性エアロゾル・煤・黄砂・海塩粒子)の検出が可能となった。本年度は、沖縄における多波長ミー・ラマン散乱ライダーの計測結果を利用し長期的に解析を行うことで、成分毎のエアロゾルの実態解明を行った。ライダー観測のアルゴリズムの検証のため、PM2.5やPMc(粒径が2.5μm以上のPM)、OBC、などのエアロゾルの地上観測データも共に解析した。沖縄では、PM2.5とOBCは冬季と春季に高くなり、夏季にはこれらの成分は低濃度となり比較的クリーンであることが確認された。夏季から秋季にかけてPMcが突然上昇するイベントが観測されていたが、これらは台風と一致しており、PMcの成分は主に海塩粒子で構成されていることが推察された。一方、多波長ミー・ラマン散乱ライダーの4成分の変動は、エアロゾルの地上観測と概ね整合的であったが、地上観測と比較して煤を過大評価する問題点が明らかとなった。今後、ライダーアルゴリズムの改良を行い数値モデルの検証を進める。
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