研究課題/領域番号 |
15K16121
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
梶野 瑞王 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (00447939)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エアロゾル / 化学輸送モデル / 湿性除去 / Rainout/washout比 / ラージエディシミュレーション / エアロゾル・雲相互作用 |
研究実績の概要 |
湿性除去過程は、大気エアロゾルの沈着量とその大気中の存在量を支配するにも関わらず、そのモデル再現性は極めて低い。湿性除去過程は、雲核形成に伴う雲内除去(rainout)と雨滴との衝突併合による雲底下除去(washout)に大別されるが、通常の観測では、rainoutとwashoutを区別して測定することが出来ない。そこで本研究では、エアロゾルと降水の物理観測と化学観測を併用することで、信頼度の高いrainout/washout寄与率を導出する。そして、rainoutとwashoutのモデル再現性を個別に評価することにより湿性除去過程のモデル精度を大幅に向上し、また、エアロゾルの湿性除去過程を支配する要因を明らかにすることが目的である。 それに対して本年度は、過去の従来法を用いたrainout/washout比の観測結果のモデル評価に関する成果を学術雑誌に発表した(Kajino and Aikawa, 2015)。また同時に、降水の粒径分布を高時間分解能で測定できるディスドロメーターと降水0.5 mm毎に化学成分を測定できる酸性雨測定装置(AR-107SNA)を気象研究所の露場に設置し、通年観測を行った。そして気象研で常時観測しているエアロゾルの化学組成と粒径分布、二酸化炭素排出硫黄濃度、及び気象観測結果を併用して解析を行い、2016年度気象学会春季大会でポスター発表予定である。また、気流の乱れの微細構造を記述できるラージエディシミュレーションを実装した気象モデルSCALE-LESに詳細なエアロゾルモデルを追加実装し、エアロゾルと雲微物理過程の相互作用に関する研究成果を、同大会で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、下記の通り研究を進める計画であった。 [1] エアロゾルと降水の物理・化学同時観測により、washout除去率・除去量およびrainout除去量を降水1mm間隔で導出する。雨滴とエアロゾルの粒径分布(物理観測)よりwashout除去率を導出し、エアロゾル化学組成の観測結果を併せてwashout除去量を算出する。降水化学成分測定結果からwashout除去量を差し引いたものを、rainout除去量とする。 [2] 領域気象化学モデル(NHM-Chem)により、東アジア及び関東平野におけるエアロゾルの発生・輸送・変質・除去過程の計算を行い、モデルによるwashout除去率・除去量およびrainout除去量について観測結果と個別に比較し、湿性沈着モデルの性能評価を行う。 [3] 観測を長期間(1年間以上)継続し、観測されたwashoutとrainout寄与率とその時間変動を計算結果と比較し、基礎理論に基づいて湿性沈着モデルを改良する。改良されたモデルと観測により、washoutとrainoutそれぞれのプロセスとその時間変動を支配する要因を明らかにする。 [1]は達成した。[2]についてはKajino and Aikawa (2015) により、部分的に達成した。すなわち、従来法による観測結果との対比を行った。[3]については観測については達成した。
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今後の研究の推進方策 |
上記、進捗状況に掲げた3つの具体的研究計画について、[1]の結果(2016年気象学会春季大会で発表予定)をとりまとめて学術雑誌(Atmospheric Environment誌を想定している)に投稿する。[2]を遂行するために、本研究で新たに導出したwashout/rainout除去量をNHM-Chemにより評価する。その結果をまとめて[3]を完遂する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計算機資源(サーバ)の購入を計画していたが、他の研究費との合算で購入した結果、本研究費の分担額が減ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
計算機資源の追加購入(RAID)を予定している。
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