河川から高頻度に検出され、細胞内にポリリン酸を蓄積する能力を有するIRD18C08クラスターに属する浮遊細菌が、河川のリン循環においてどのような役割を担っているのかを解明するため、下記の2点に関して研究を行った。 1.IRD18C08クラスターに属する浮遊細菌が、河川水中にどのくらいの量で存在しているのかを詳細に明らかにするため、前年度に最適検出条件を確立したIRD18C08クラスターに特異的な蛍光標識オリゴヌクレオチドプローブを用いた検出法(CARD-FISH法)により、1年間埼玉県内河川5地点において、毎月採水及び細菌数の計測を行った。その結果、河川水1mL中に平均で約54万細胞ほど存在し、全浮遊細菌の約12%を占めていることが明らかとなった。 2.IRD18C08クラスターに属する浮遊細菌が、単位細胞当たりどのくらいのリン酸態リンを取り込むのかを明らかにするため、純粋分離株を用いた培養実験により、細胞数計測とイオンクロマトグラフによるリン酸態リンの取り込み量の測定を行った。その結果、IRD18C08クラスターに属する浮遊細菌は、1細胞当たり約1.8fgのリン酸態リンを取り込むことが明らかとなった。 以上の結果より、IRD18C08クラスターに属する浮遊細菌が、河川水中のリン酸態リンのおよそ0.6%の動態に寄与していると推計された。また、現在IRD18C08クラスターに属する浮遊細菌の全ゲノム解析、生理性状分析、キノン分析、脂肪酸分析が終了しており、新属・新種提案のための手続きを進めている。
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