大規模一塩基多型(SNP)解析による疾患関連SNPの探索が進められており、診断や治療への適用、個別医療の実現化が期待されている。しかし、患者由来細胞株を用いた検証では、遺伝学的背景の違いにより性質に差が生じる懸念がある。この問題を解決するため、本研究課題では、逆遺伝学的手法を用いた一塩基編集技術を用い、ヒトSNP導入細胞の樹立を試みた。 昨年度は、CRISPR/Cas9システムと点変異を含む一本鎖オリゴDNA(ssODN)を用いた一塩基編集法を確立した。放射線感受性遺伝病ナイミーヘン症候群の原因遺伝子であるNBS1をモデルケースとしSNP導入細胞の作製を計画した。最終年度までに、5種類作製することに成功し、片アリルもしくは両アリル性に同一SNPが導入された細胞を複数クローン得ることができた。本年度はさらに、樹立したSNP導入細胞を用いた表現型解析を通じて、放射線影響解析を進めるための評価系を確立した。具体的には、コロニー形成法を用いて放射線致死感受性を検討し、サイトスキャンニング顕微鏡を用いた微小核形成頻度測定法により、放射線誘発染色体異常を評価し、任意のSNPによる細胞影響を逆遺伝学的に解析することが可能となった。 SNP解析研究は将来的に、テーラーメイド治療/診断の実現に向けた基礎基盤研究となりえると期待される。本研究成果は、将来的に様々な疾患関連SNPに応用が可能であると考えられ有用である。
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