研究課題/領域番号 |
15K16128
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
河合 聡人 崇城大学, 薬学部, 助教 (20435150)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | DNA相同組換え / DNAクランプ / タンパク質の結晶化 |
研究実績の概要 |
DNA複製や修復時には、様々な酵素が次々と順序良くDNAに作用することで一連の酵素反応が実施されている。ここで、酵素反応の足場となり、円滑な反応を進行させる重要な因子としてDNAクランプの存在が注目されている。本研究は、DNA相同組換え機構において、ホリデイ構造の移動から切断に至る一連の酵素反応が、四量体型DNAクランプによって制御される仕組みを明らかにすることを目的にしている。そして、これらの反応を担当するDNAヘリカーゼ(Hjm) - ホリデイ構造 複合体、リゾルバーゼ(Hjc) - 四量体型DNAクランプ - ホリデイ構造 複合体といった超分子複合体についてX線結晶構造解析を用いた立体構造の解明を目指している。 本年度は、Hjc - 四量体型DNAクランプ複合体について結晶化条件の最適化に取り組み、得られた結晶を用いて放射光実験施設でのX線回折実験を実施した。結果、構造解析には至らなかったが、得られた回折像はタンパク質結晶に観察される格子の大きな結晶であることを示していた。結晶を溶かしたサンプルをSDS-PAGEで分離した結果も踏まえ、得られている結晶は意図としたタンパク質複合体の結晶であると判断し、現在さらなる結晶化条件、X線回折実験条件の最適化を進めている。また、Hjmについては収量の向上を目指し精製条件を再検討している際にタンパク質の分解が疑われるような結果が得られるようになった。現在、このタンパク質分解を防ぐ手段を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Hjmでは収量の向上を目指して精製条件の最適化を行ったところ、これまでは観察されなかったタンパク質の分解が認められるようになった。このタンパク質の分解は従来の手順に戻しても観察されるため、分解を防ぐ方法を検討項目に追加することになった。また、Hjc - 四量体型DNAクランプ複合体について結晶化条件を最適化したところ針状の単結晶が得られるようになった。この結晶を用いて所属機関に設置されたX線回折実験装置で回折実験を実施したが回折像は観察されず、X線回折実験条件の最適化を放射光実験施設で実施することになった。しかし、放射光実験施設での実験時間が確保できず研究の進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
Hjmについては早期にタンパク質分解を防ぐのに有効なプロテアーゼ阻害剤や緩衝液の条件を見出し、結晶化条件の検討を実施する。また、Hjc - 四量体型DNAクランプ複合体については、現在結晶が得られている条件を基に、より厚みのある結晶が得られるような結晶化条件の最適化を進める。そして、得られた結晶は放射光実験施設で凍結条件の検討を実施する。さらに現在結晶の得られていないホリデイ構造で超分子複合体についても、DNA鎖の長さを変えながら結晶化条件を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
冬季に放射光実験施設での実験時間が確保できず、この実験で必要な施設までの旅費、実験サンプル運搬費用等に使用することを計画していた予算が余ってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度に残った分については、新たに検討項目として追加したタンパク質分解を抑えるプロテアーゼ阻害剤の購入や、大きく値上がりした結晶化に使用するシリコン加工されたカバーガラスの購入等に充てる予定である。
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