研究課題/領域番号 |
15K16131
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
野口 実穂 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 東海量子ビーム応用研究センター, 主幹研究員(定常) (40455283)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 老化 / DNA損傷応答 / オートファジー / LC3 / 線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、BJ-5ta細胞(不死化ヒト正常線維芽細胞)を用いて、X線照射後に細胞の増殖が停止しているのかどうかを、チミジンのアナログであるEdUがDNA合成期に細胞内に取り込まれる割合を調べることにより判定した。EdUの取り込み率は細胞が対数増殖期にある場合45%程度であるが、20GyX線を照射すると、照射2日後にはほぼ0%となり、照射後15日経過しても増加は認められなかった。この結果と前年度のβ-Gal染色との結果を合わせて、BJ-5ta細胞はX線20Gy照射により細胞周期が停止し、老化が誘導されたことが明らかとなった。 また、X線照射後老化が誘導される細胞ではDNA損傷が残存しているのか否かを明らかにするため、DNA二本鎖切断の指標となるγ-H2AX fociについて、X線20Gy照射後のフォーカス数を経時的に調べた。照射30分後には100個以上のフォーカスが観察でき、その後は急激に減少したが24時間後は30個程度のフォーカスが残っていた。照射6日後には10個程度まで減少したが、30日経過した後も各細胞で7個程度のフォーカスが残存していることから、修復されていないDSBが残っていることが明らかとなり、その結果DNA損傷応答(DDR)が長期間持続していることが示唆された。 次に、X線照射後のオートファジー活性の経時的な変化を明らかにするため、LC3タンパク質の発現をwestern blottingで調べた。またオートファゴソームを特異的に染色するCyto-ID試薬を用いて、オートファジー活性のモニタリングを行った。現在は、これらの実験の再実験と、異常タンパク質がオートファジーにより分解されるために必要なアダプタータンパク質のp62、NBR1の発現をwestern blottingにより調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しているが、オートファゴソーム膜に結合するLC3タンパク質のwestern blotting の結果が安定していない。オートファジーには様々な因子が関与することから、LC3等のwestern blotting の結果を評価するためには、オートファゴソームのリソソームによる分解を阻害することが必要と考えられる。そのため、令和元年度はこの実験を実施することを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、X線照射後のオートファジーの活性をCyto-IDによる免疫染色により調べ、LC3やアダプタータンパク質のp62やNBR1、オートファジー経路の上流に位置するULK1のwestern blottingを行う。照射後の老化の誘導や細胞周期停止の持続、DDRの持続などを示すデータはすべて取り終えているため、オートファジー活性を調べたデータを加えて取りまとめ、論文として投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
すべての助成金はH29年度に支払われているが、育児休業のための期間延長で令和元年度まで助成期間が延長されている。そのため、令和元年度分を残す必要があり、次年度使用額が生じた。そのため、本年度の請求は行っていない(0円)。 次年度使用額は複数の抗体と、オートファゴソーム染色試薬、学会参加料や論文投稿料、校閲料に使用する予定である。
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