本年度は,新規反応場の効果の検証ならびに,繊維状材料の新規合成法の確立による脱硫性能の向上の検討を実施した.新規反応場の検討として,大気圧非平衡プラズマを重畳させることにより生成するオゾンによって脱硫性能の向上は前年度の結果より明らかにされていた.本年度は,脱硫だけでなく脱硝性能の発現の可能性を模擬排ガス中に窒素酸化物も導入して検討した.オゾン非導入時,脱硫性能は,窒素酸化物の硝酸塩化反応が阻害因子となり性能が低下した.それと同時に,脱硝性能も,硫黄酸化物の硫酸塩化に伴い阻害され性能が低下した.本結果より二酸化マンガンの脱硫脱硝性能はそれぞれの酸化物の塩化反応により阻害されることを明確にした.本フィルターにオゾンを導入し同様の検討を行った結果,オゾンによる酸化活性の向上に伴い,脱硫,脱硝性能ともに向上し,特に脱硝性能は大きく向上したことを明らかにした.しかし,二酸化マンガンの硫酸塩化,硝酸塩化反応に起因するガス浄化機構では説明できないほど性能は向上し,本機構を明らかにすることで,これまで予測してきた最小フィルター体積をさらに小型化できる可能性を見出した. 新規材料開発として現有する高比表面積化された二酸化マンガンをナノオーダーで高分散化させることを目指して,静電紡糸法を用いたカーボンファイバー担持二酸化マンガンの合成を行った.カーボンファイバー前駆体としてPAN(ポリアクリロニトリル)を,溶媒としてDMF(ジメチルホルムアミド)を選定し,担持に酸化マンガン量,PAN濃度をパラメーターとして前駆体インクを作成し静電防止法によりファイバー化させナノファイバー担持二酸化マンガンを作成し,合成に成功した.担持マンガンあたりの脱硫性能で,初期速度の大幅な向上ならびに吸収容量の向上に成功した.今後は,合成条件をさらに検討し質量あたりの性能向上を目指す.
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