研究課題/領域番号 |
15K16141
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
梶原 夏子 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 主任研究員 (80363266)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 臭素系難燃剤 / ポリ臭素化ジフェニルエーテル / ストックホルム条約 / 廃プラスチック / 家電リサイクル / 非意図的混入 / 代替難燃剤 |
研究実績の概要 |
現在、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)対象の難燃剤PBDEsを含む製品であっても、リサイクル及び再生製品の使用は制限されていないため、資源回収された難燃剤含有廃プラスチックやそれを利用した再生製品は国際的に流通しているが、その実態は不明である。PBDEs含有製品の材料リサイクルは、POPsの広範な拡散汚染を招き、元来の使用用途よりもヒト曝露リスクを高める可能性が懸念される。本研究では、規制難燃剤含有廃プラスチックの国際的な循環利用に伴うリスク管理を考える上で重要なケースとして、再生プラスチック製品への規制難燃剤混入実態に関する国際調査を実施し、POPs含有廃製品の適正管理に資するデータを提示することを目的としている。3か年計画の一年目である平成27年度は、本申請課題を効率的に推進できるように製品中BFRsのスクリーニング法・簡易分析法を検討した上で、国内入手製品を対象にPBDEs含有実態調査を実施した。 国内で入手した玩具や日用雑貨(269製品/580部材)を対象に調査を開始し、まずは可搬型蛍光X線分析計を用いてPBDEs含有の指標となる臭素濃度を非破壊(試料調製・前処理不要)でスクリーニングした。対象とした製品の約10%から1,000 mg/kg以上の臭素濃度が検出され、何らかの臭素系難燃剤が意図的に添加された素材を使用していることが示された。また、全体の約15%の製品からは難燃効果を得るには低い臭素濃度(30~1,000 mg/kg程度)が検出されたことから、循環過程で臭素系難燃剤含有樹脂が混入したことが示唆された。XRFスクリーニングで臭素濃度が一定濃度以上の部材については、凍結粉砕の後、PBDEsの詳細化学分析に着手した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請課題の製品調査では、大量の製品を効率よく調査することが重要となってくる。そこで、当初予定通り、製品中BFRsのスクリーニングおよび簡易分析のスキームを構築した。まず、製品部材中BFRs含有の指標となる臭素濃度を可搬型蛍光X線分析計を用いて非破壊(試料調製・前処理不要)でスクリーニングし、臭素濃度が一定濃度を超過した製品部材については、簡易な前処理(溶媒抽出、樹脂析出・除去)のみでトリプル四重極ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS/MS)を用いてPBDEs異性体を定性・定量する調査スキームを確立した。国内で入手した250製品以上の玩具、食品容器、日用品などを対象に幅広くスクリーニングおよび化学分析を実施しており、重要な対象製品群の絞り込みを進めるとともに、規制BFRs以外の新規/代替BFRsの含有実態も併せて調査し、データの蓄積を図る体制を整えた。今後、より幅広い価格帯の製品に調査対象を拡大する必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
二年次以降は、国内調査を継続するとともに、初年度の国内調査を通して確立した作業フローを海外調査に適用する。国内調査の結果に基づき優先して収集する製品群を決定し、先進国、新興国、途上国等から複数の国/地域を対象に規制BFRs含有量調査を実施する(合計250製品程度)。まずは、海外協力研究者と打ち合わせを行い、海外試料の収集に着手する。得られた成果は、入手国・地域、製造国、製品群、樹脂種類、価格帯などによるPBDEs混入実態の整理をおこない、有害物質混入回避のための方策に資するデータを提示する。当初、様々な国や地域で製造された再生プラスチック製品を入手することを予定していたが、調査を進める中で、多くの国で市販されている安価なプラスチック製品は中国など特定の国からの輸入製品であり、試買調査を実施する国で製造されているものを特定および入手することは困難であることが予想される。その場合、市場に流通している海外製プラスチック製品についても、再生製品と考えられる製品について規制BFRs(PBDEs)混入実態を調べる方針で進める。 また、途上国E-wasteサイト排出物の調査を実施する。E-waste解体後に発生する主に家電筐体プラスチックの再利用の実態を調査する。調査地域としては、申請者のグループでこれまでに環境調査の実績がある中国、ベトナム、インドを候補とする。現地で材料リサイクルされている場合は、廃プラスチック破砕物や樹脂ペレットの入手、再生製品の特定を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
調査対象製品は、安価なものとして百円均一商品や無料頒布品(おまけ)、中価格帯としてホームセンターなど量販店で購入できるもの、高価格帯としては百貨店などで販売されているもなど様々な価格帯のものを選定する予定であったが、今年度は安価なものを中心に試買調査を実施したため試料購入費に残額が生じたため。また、化学分析用試薬類の消費が当初予定より少量で済んだため。
|
次年度使用額の使用計画 |
海外を対象に規制難燃剤の含有実態把握調査を開始するとともに、国内調査を継続し、様々な価格帯の製品試料購入費および化学分析用試薬類購入費などに充てる。
|