光分解により生態毒性が上昇する医薬品類が数多く存在することが明らかとなってきた。そこで本研究では、医薬品類の光分解産物の濃度予測手法の構築を目的とし、解熱鎮痛剤のketoprofenと、その光分解産物である3-ethylbenzophenone、3-(1-hydroxyethyl)benzophenone、3-acetylbenzophenone(以下KTP、EBP、HBP、ABPとする)を対象に、河川と下水処理場における現地調査、太陽光照射実験、モデル構築を行った。 太陽光照射実験によりEBP、HBP、ABPの量子収率と親物質であるKTPからの生成率が定量された。EBPがKTPの主要な光分解産物であり、太陽光に対しては比較的安定していることが明らかとなった。現地調査により、日中は河川流下過程においてKTPが減衰し、EBP、HBP、ABPが生成していることが示された。また、EBPは下水処理場内でも生成している可能性が示された。EBPは構築したモデルによる予測値と実測値とが概ね一致し、桂川と西高瀬川において河川水中のEBP濃度が高い精度で予測可能であることが明らかとなった。一方で、HBPとABPはモデル推定値と実測値とに乖離が見られたため、モデル推定精度の向上のための検討が必要であると考えられた。 なお本年度は、昨年度に実施した現地調査とラボ実験を異なる季節・河川を対象に実施しており、得られた結果の信頼性・適用性の向上に努めた。
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