研究課題/領域番号 |
15K16145
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
黒田 真史 大阪大学, 工学研究科, 助教 (20511786)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カルコゲン / セレン / テルル / トランスクリプトーム / 資源回収 |
研究実績の概要 |
化合物半導体含有廃棄物からセレンを揮発化させることにより回収する細菌として有望なPseudomonas stutzeri NT-Iのセレン代謝に関わる分子メカニズムの解析に注力した。 1mMのセレン酸(Se(VI))、亜セレン酸(Se(IV))、または元素体セレン(Se0)を含むTSB培地20 mlにOD600 = 0.6となるようにP. stutzeri NT-Iを接種し、Se(VI)、Se(IV)については0.5時間と1時間、Se0については24時間後に培養液を採取した。RNAprotect Bacteria Reagent (Qiagen)を用いてRNAの安定化とtotal RNAの抽出を行った。次にRiboMinus (Thermo)を用いてribosomal RNAを除去した後、Ion Total RNA-Seq Kit v2 (Thermo)を用いてライブラリを作製した。エマルジョンPCRでテンプレートを作製し、次世代シーケンサー(Ion PGM, Thermo)を用いたRNA-Seqを行った。 その結果、Se(VI)およびSe(IV)のいずれを添加した場合にも転写が促進される遺伝子クラスター(クラスターI)が見いだされた。クラスターIにはCysteine desulfurase等の含硫アミノ酸代謝に関わる酵素の遺伝子が多く含まれており、セレン代謝と硫黄代謝が深く関連していることが示唆された。また、Se0添加時には膜輸送に関わるタンパク質の遺伝子を多く含むクラスターの転写が促進された。これらの遺伝子から、細胞外からのセレンの取り込みまたは細胞外への輸送がセレン代謝において重要な役割を担っているものと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セレン代謝に関わる多くの遺伝子を明らかにしており、セレンの揮発化機構の一端を明らかにしつつあることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに報告例のない、テルル(Te)の揮発化を行う新規微生物の単離をめざす。特に、顕著なSe揮発化細菌であるPseudomonas stutzeri NT-IがTe揮発化能を持つかどうかを検証する。フラスコを用いた回転振盪培養条件、およびバイオリアクターを用いた通気培養条件においてNT-I株によるTe揮発化を評価する。1 mMの亜テルル酸(Te (IV))を含むTSB培地中で、37°Cで好気的にNT-I株を培養する。ICP-AESを用いて液相Te量および固相Te量を経時的に測定し、初期Te添加量から減じることで算出した消失Te量から揮発化量を推定する。また、通気培養条件においては、排気中のTeを濃硝酸中にバブリングすることでトラップし、揮発したTeの定量を試みる。
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