ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、糖や植物油といった再生可能資源を原料に微生物により合成されるポリエステルであり、PHA重合酵素がモノマーであるヒドロキシアルカン酸を重合することで合成される。本研究で着目したBacillus cereus由来のPHA重合酵素(PhaRC)は、PHAの重合能に加えて加アルコール分解能を有することが分かっている。 前年度までに、加アルコール分解反応に用いるアルコール構造を選択することで、様々な末端構造を有するPHAを生合成できることを確認した。また、末端基を介した反応によりブロックコポリマーを合成した。これまでに扱ったPHAは繰り返し構造が3-ヒドロキシブタン酸のP(3HB)であったが、繰り返し構造によって物性が大きく変化することから、他の構造のPHAをターゲットに、エテニル基と反応するチオール基を分子鎖末端に有するPHAの生産を試みた。連鎖移動反応の利用を含めて検討したものの、培養液にチオール基付加の目的で試薬を添加すると菌体の増殖が大きく抑制され、目的のPHAを取得することができなかった。PhaRCを用いてP(3HB)を合成する培養系では、同じ試薬を添加してもPHA合成が確認できており、PhaRCではこのような試薬の存在下でもPHA合成に大きな変化が生じないという興味深い結果となった。 一方、本研究で得られた様々な末端を有するPHAの核剤としての有用性を調査したところ、特定の末端構造を有する低分子量PHAにおいて、母材であるPHAの結晶化を促進することが分かった。本研究期間は終了してしまったが、この結晶化促進効果と末端構造の関連を明らかにすることは学術的に重要であると考えており、今後も引き続き研究を進める予定である。
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