本研究では、現在~将来の廃棄物における埋立地内での安定化を把握し、その評価・予測方法を確立することを目的とし、埋立物が異なる埼玉県内の3カ所の埋立地(A~C)を対象とし、埋立物が明らかな区域を埋立セルと設定した。それぞれの埋立セルにモニタリング用の各種設備を設置し、内部温度や内部ガスのモニタリングを実施した。また、埋立地Aでは比抵抗探査によるモニタリングを行った。 埋立地Aのモニタリング結果より以下のことが明らかとなった。①内部温度モニタリングより埋立直後から温度が低下し、約1年で20~30℃に安定化することが示された、②二酸化炭素は検出されず焼却灰による中和の影響が示唆された、③メタンはモニタリング開始後にピークを示し、その後一定の値で推移しており、さらに酸素はほとんど検出されなかったことから、埋立層内の安定化プロセスにおけるメタン生成定常期に速やかに移行している可能性が示された、④さらに焼却残渣の埋立割合が小さいほどメタン濃度は高く、一方で水素濃度は低く、比抵抗は高くなっており、埋立廃棄物の質的相違が発生ガス組成や比抵抗に影響することが示された、⑤比抵抗変化率を求めることにより強雨イベントに伴う含水率低下と洗い出しの進行状況を可視化できる可能性が示された。 また、埋立地Bでは台風等の影響により一時期冠水したが,冠水状況が改善された後は内部の電気伝導率が低下し,洗い出しが著しく進行することが確認された。飛灰固化物と溶融スラグのみを埋め立てている埋立地Cでは電気伝導率の低下は見られず,洗い出しが進んでいないことが確認された。 以上より、焼却残渣リサイクルが進んでいく今後の循環型社会における埋立地の安定化挙動を把握できる可能性が示された。
|