研究課題/領域番号 |
15K16150
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
乾 隆帝 山口大学, 理工学研究科, 助教 (20723844)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 汽水域 / 河川 / ハビタット / 魚類 / シミュレーション / 塩分 / 河床 / 保全 |
研究実績の概要 |
汽水域における水理特性と、河口域に形成されるハビタットの関連性や、それに応じた河口域生態系の差異については明らかにされていないため、河川の流域特性に応じた汽水域生態系の保全や自然再生を行うことができないのが現状である。そこで本研究では、西日本の1級水系の河川汽水域において、河床変動および塩分変動シミュレーションの結果を用い、河川汽水域を類型化するとともに、河床変動および塩分変動特性が、魚類の出現パターンに与える影響を明らかにすることを目的とした。本研究で実施する河川汽水域の類型化は、河川汽水域における学術的な貢献のみならず、現場レベルの生態系保全・河川管理施策にも重要な知見となりうるものである。 平成27年度には、対象河川において河床変動計算と塩分変動計算に用いる地形データおよび境界条件を入手・整理した。その結果、大半の河川において、河床変動計算のための地形データの作成と、流量および水位のデータの入手は完了しており、河床変動シミュレーションが可能であることが示されている。ただし、計算条件のパターンについての検討が不十分であるため、平成28年度も河床変動シミュレーションを実施する。塩分変動シミュレーションについては、計算のための地形データの作成は完了しており、シミュレーションが可能な段階に至っている。計算条件と、データの代表値を抽出する方法について現在検討中であるため、平成28年度も引き続き塩分変動シミュレーションを実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、西日本における1級水系のうち、九州地方の遠賀川、番匠川、小丸川、松浦川、中国地方の、佐波川、小瀬川、芦田川、高梁川、吉井川、高津川、天神川、近畿地方の北川、紀ノ川、新宮川、四国地方は、那賀川、土器川、物部川、重信川について定期横断測量データ(200mピッチ)について国土交通省に提供していただいた。それらの地形データを、河川シミュレーションソフトであるiRICおよびArcGISを用いて、河床変動計算および塩分変動計算が可能な形に加工・整理した。河床変動計算は、iRICのNays2DHソルバを用いて、一定条件の混合粒径にておこなった。その結果、上記の全河川で計算が可能であることが明らかになった。ただし、計算条件のパターンについての検討が不十分であるため、平成28年度も河床変動シミュレーションを引き続きおこなう必要性が示された。 また、塩分変動計算は、Fantom3Dを用いておこない、上記の全河川で計算が可能であることが明らかになった。ただし、計算条件と、データの代表値を抽出する方法について現在検討中であるため、平成28年度も引き続き塩分変動シミュレーションをおこなう必要性が示された。また、本年度は、H28年度におこなう予定であった対象河川の河川水辺の国勢調査のデータのダウンロードをおこない、各河川に出現した魚類を、河川利用形態別(純淡水性魚類、回遊性魚類、汽水生魚類、周縁性魚類)に区分した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度に続き、河床変動シミュレーションおよび塩分変動シミュレーションをおこない、それぞれの河川の汽水域の河床が、どのように変化するか、そして、各河川の平水時の塩分がどのように変動するかを明らかにする。 魚類データの整理と出現パターンの解明については、平成27年度に対象河川の河川水辺の国勢調査のデータの整理は完了したため、平成28年度は、遠賀川、番匠川、小丸川、松浦川、高津川、天神川、北川、紀ノ川、新宮川、物部川について、汽水性ハゼ類の追加調査をおこなう。これらのデータを用いて、クラスター分析やTWINSPAN分析を行うことにより、河床変動と塩分変動の両方を加味した河川汽水域タイプと、魚類の出現パターンとの関係性を明らかにする。 計算結果の検証のための河床材料・塩分調査を一部河川においておこなう。対象河川は、上記の河床変動シミュレーションおよび塩分変動シミュレーションの結果によって選定する。河床材料については、河床変動計算の結果、①単調に細粒化する、②多様な河床が存在する、③単調に粗粒化すると算出された河川の中から、それぞれ数河川を抽出し、河床材料を調査する。塩分については、塩分変動計算の結果、①一様に低塩分、②多様な塩分が存在、③一様に高塩分と算出された河川の中から、それぞれ数河川を抽出し、塩分のモニタリング調査を行う。これらの野外調査によって得られたデータを、H29年度に河床変動・塩分変動モデルにフィードバックすることにより、モデルのブラッシュアップをおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した機材が当初の予定より低価格で購入できたため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の旅費として使用する計画である
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