汽水域における水理特性と,河口域に形成されるハビタットの関連性や,それに応じた河口域生態系の差異については明らかにされていないため,河川の流域特性に応じた汽水域生態系の保全や自然再生を行うことができないのが現状である.そこで本研究では,西日本の1級水系の河川汽水域において,河床変動および塩分変動シミュレーションの結果を用い,河川汽水域を類型化するとともに,河床変動および塩分変動特性が,魚類の出現パターンに与える影響を明らかにすることを目的とした.本研究で実施する河川汽水域の類型化は,河川汽水域における学術的な貢献のみならず,現場レベルの生態系保全・河川管理施策にも重要な知見となりうるものである. 平成29年度は,平成28年までに明らかにした(1)西日本の河川汽水域における魚類の出現パターン,(2)オブジェクト指向型数値流体モデル(Fantom3D)を用いての塩分変動シミュレーションおよび(3)河床変動シミュレーションの結果を整理し,周縁性魚類および汽水性ハゼ類によって類型化された河川グループ間で,汽水域全域および汽水域浅所における塩分変動および平均底面塩分を比較検討し,さらに,出水前後における河床材料の粗粒化・細粒化傾向の比較検討をおこなった.また,塩分変動シミュレーションの結果の検証のために,高梁川の汽水域2箇所と吉井川の汽水域3箇所において夏季(8月)の2週間,電気伝導度ロガーを河床底面に設置することにより塩分の変動を測定し,2016年および2017年におこなった野外における塩分測定に該当する期間における検証用の塩分変動シミュレーションを新たにおこなった.
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