Si系太陽電池を普及させるには、発電コストを大きく低減することが必須である。既存電池価格の大部分はAg集電電極が占めており、その電極抵抗率は10μΩcm以上とバルク特性(2μΩcm)には及ばない。即ち、Agを安価なCuに代替することで大幅な低コスト化、更に電極抵抗率を下げることで、数%の電池効率の向上が望める。電極形成には低温焼結Cuナノ粒子が必要であるが、既存の合成方法と電極化技術では、高コストかつ酸化の問題により実用に適さない。そこで本研究では、究極的に低コストかつ耐酸化性を有するCuナノ粒子の合成技術を基礎として、粒子の形状制御により電極抵抗率を減少させ、粒子-電池基板の電荷制御による簡便・低コストな電極化技術を開発し、太陽電池の低コスト化・高効率化を達成することを目的としている。平成27年度において、低コストな手法によって得られた銅ナノ粒子を用いて焼結温度200℃以下において抵抗率、約7μΩcmを達成している。平成28年度は、電極化技術を検討した。簡便・低コストな技術として、即座に粒子を積層可能であり、かつ高コストな有機溶媒ではなく、安価な水を用いた技術を開発した。合成された粒子は、水中での安定性の欠如(酸化・凝集)が課題であったが、クエン酸を用いた新規表面処理により安定性を付与することに成功した。また本粒子を用いた、粒子と基板間の電荷制御のみでは、電極に必要な粒子積層高さである10μm以上を達成できなかったため、当初の計画通り、電気化学的手法である電気泳動法を用いることで5μm/min以上でナノ粒子を積層することに成功した。ただし、本研究ではSi基板上にITO膜が形成された基板を用いたが、銅ナノ粒子は焼結後にITO膜からの剥離が確認され、正確な太陽電池効率を測定できていない。今後は、本研究結果を展開し、銅ナノ粒子の基板への接合を考慮、改善し太陽電池の高効率化を検討する。
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