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2015 年度 実施状況報告書

海産藻類が持つ独自の代謝経路の解明と、代謝改変によるオイル生産能の増強

研究課題

研究課題/領域番号 15K16156
研究機関関西学院大学

研究代表者

辻 敬典  関西学院大学, 理工学部, 助教 (40728268)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード海洋性珪藻 / 光合成 / 代謝工学 / バイオ燃料 / マリンバイオテクノロジー
研究実績の概要

珪藻は、デンプンを作らずに可溶性βグルカンを蓄積する点や、葉緑体が四枚の包膜に包まれている点など、緑色植物とは異なる代謝的・構造的特徴を持つ。また、珪藻はオイル(トリアシルグリセロール)蓄積量が多く、藻類を用いたバイオ燃料生産の有力な候補として着目されている。本研究では、海洋性珪藻における脂肪酸合成系への材料供給経路を明らかにし、その経路を増強することで高いオイル蓄積能を持つ株を作出することを目指している。
緑色植物では、脂肪酸合成の材料となるアセチルCoAは、細胞質から葉緑体へと取り込まれたホスホエノールピルビン酸から合成される。一方、珪藻ではカルビン・ベンソン回路から葉緑体内で直接アセチルCoAを供給していることがゲノム情報から示唆されている。2015年度は、海洋性珪藻のアセチルCoA供給経路を明らかにするため、候補となる代謝酵素の過剰発現体、ノックダウンおよびノックアウト株の作出を行った。その結果、過剰発現体を得ることができ、さらにノックダウン株の候補を複数得た。今後、各形質転換体について、代謝産物およびオイル蓄積量を比較し、海洋性珪藻におけるアセチルCoA合成経路を解明すると共に、オイル合成への寄与を調べる。ノックアウト株については、現在ゲノム編集技術による代謝酵素のノックアウトを試みている。また、葉緑体内でのアセチルCoA供給に関与すると考えられる代謝酵素の酵素学的特性を明らかにするために、大腸菌でリコンビナントタンパク質を作成を試み、活性を持つリコンビナントタンパク質の作成に成功した。今後は、リコンビナントタンパク質の生成と特性解析を進める予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

海洋性珪藻において、代謝酵素の局在確認のためにGFP融合タンパク質を発現させたが、うまく融合タンパク質が発現しなかった。これに関しては、融合タンパク質の設計を変更することで融合タンパク質を発現する形質転換体が得られ、これから局在解析を行う予定である。また、大腸菌でのリコンビナントタンパク質の発現においては、原因は不明だが、過剰発現ができずにリコンビナントタンパクの発現量が極めて少なかった。以上の予期せぬ問題によって、当初の予定より研究がやや遅れている。

今後の研究の推進方策

珪藻におけるGFP融合タンパク質の発現、大腸菌によるリコンビナントタンパク質の発現において、予期せぬ問題もあったが、現在それらの問題はすべて解決した。今後は得られた形質転換体およびリコンビナントタンパク質の解析を進める予定である。海洋性珪藻において、RNAiによるノックダウンはうまくいかないケースもあるため、Transcription activator-like effector nuclease (TALEN)による遺伝子破壊も平行して進めている。
珪藻の形質転換対の解析においては、トリアシルグリセロール合成経路だけにフォーカスを絞らず、メタボロミクスや安定同位体を用いたトレーサー実験による包括的な代謝解析を予定している。また、当初の計画に含めた複数の代謝酵素発現による代謝改変も平行して行う。

次年度使用額が生じた理由

リコンビナントタンパク質の作成など一部の実験に遅れが生じたため、タンパク質解析のための消耗品(物品費)の一部は2015年度に使用しなかった。また、研究の遅れにより論文投稿ができなかったため、英文校閲費として計上した費用(その他)は2015年度に使用しなかった。

次年度使用額の使用計画

予定より遅れてはいるが、当初の計画どおりリコンビナントタンパク質の解析および論文投稿のための英文校閲費として使う。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Quantitative analysis of carbon flow into photosynthetic products functioning as carbon storage in the marine coccolithophore, Emiliania huxleyi2015

    • 著者名/発表者名
      Yoshinori Tsuji, Masatoshi Yamazaki, Iwane Suzuki, Yoshihiro Shiraiwa
    • 雑誌名

      Marine Biotechnology

      巻: 17 ページ: 428-440

    • DOI

      10.1007/s10126-015-9632-1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Distinctive features of photosynthetic carbon metabolism in secondary endosymbiotic algae2015

    • 著者名/発表者名
      Yoshinori Tsuji, Yoshihiro Shiraiwa
    • 雑誌名

      Perspectives in Phycology

      巻: 3 ページ: 3-9

    • DOI

      10.1127/pip/2015/0029

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 紅藻由来の葉緑体を持つ二次共生藻類の炭素代謝2015

    • 著者名/発表者名
      辻敬典、白岩善博
    • 雑誌名

      光合成研究

      巻: 25 ページ: 202-211

    • 査読あり
  • [学会発表] Comparative study on modes of inorganic carbon uptake in marine diatoms2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshinori Tsuji, Anggara Mahardika, Yusuke Matsuda
    • 学会等名
      第57回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      岩手大学(岩手県・盛岡市)
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-20
  • [学会発表] Two distinct modes of inorganic carbon uptake in marine diatoms2015

    • 著者名/発表者名
      Yoshinori Tsuji, Anggara Mahardika, Yusuke Matsuda
    • 学会等名
      第2回分子珪藻研究会
    • 発表場所
      関西学院大学 大阪梅田キャンパス(大阪府・大阪市)
    • 年月日
      2015-11-28 – 2015-11-29
  • [学会発表] 藻類におけるC4有機酸代謝の多様な機能2015

    • 著者名/発表者名
      辻敬典、松田祐介、白岩善博
    • 学会等名
      第6回日本光合成学会年会
    • 発表場所
      岡山国際交流センター(岡山県・岡山市)
    • 年月日
      2015-05-22 – 2015-05-23
    • 招待講演

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公開日: 2017-01-06  

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